2016年6月19日日曜日

ちぐはぐな最近のAKB その1

 どうも。役所に「転入届」を出すのが遅れて、一筆書かされたきんぎょ顔だ。いやあ、役所ってめんどくさいね!

 ただ遅れたのには理由がある。

 日雇い労働者として、「AKB48総選挙2016新潟」の会場設営に参加してきたのだ。

 普段アイドルにさほど関心がなく、テレビさえ家にない生活だが、せっかくなので色々調べ、思うところがあったので記す。

 関東からの派遣労働者の第一陣として夜行バスにのり、6月15日の朝に現地入りした。
 場所はHARD OFF ECOスタジアムで、普段は主に野球場として使われている。その前日も、ベイスターズと日本ハムの試合があった。
 フェンスがやや低めの設計で、イチローのような選手ががんばればバントでホームランが打てるかもしれない。

 朝7時。地面の人工芝を守るべく分厚いゴムマットを敷く作業から始まった。この黒いゴムマットが日光を吸収し、鉄板の上のたい焼きのように我々をじりじりと責めさいなむようになるのは、昼過ぎになってからの話だ。

 給料は悪くない。一日当たり、手当て込みで2万円弱だ。
 作業時間が朝7時から夜10時までで、他に夜行バスによる移動時間が往復で11時間ぐらいある。合計26時間ほどの拘束時間だ。
 これが割に合っているか割に合っていないかは個人の価値判断だろうが、決して安すぎる仕事ではないだろう。
 事実私はこの仕事を電話で紹介されたとき、二つ返事で快諾した。

 ゴムマットが敷き終わるといよいよ器材を積んだトラックが出入りを開始し、フォークリフトも動き出す。大型のクレーン車も到着した。
 車両は地元新潟の他に、品川、千葉、など関東のものが多かった。
 トラックから器材を降ろし、コードを電源車につなぐ。昼からはステージの組み立てが始まり、フォークリフトが組み立てた骨組みを運び、その骨組みをクレーン車が吊り下げる。ステージの鉄塔が立ってゆく。作業は確実に進んでゆく。

 仕事開始からしばらくたち、関東からの派遣労働者の多くが、声に出さないまでも思ったことがある。

「俺らいらないんじゃね?」

 やとわれた身として、そしてすでに給金をもらった身としては、このようなことを書くのは非常に心苦しいのだが、まちがいなく人間の投入量をミスっていた。

 私が確認した限りでは、アルバイトだけで最大160人ほどが働いていた。ほぼ半分は地元新潟や福井からの労働者たちで、残りが関東からの派遣組だ。
 アルバイトだけでなく、直接ステージの設営を受注した施工会社のスタッフも現場にはいたから、200人は人間がいただろう。

 明らかに人手が余っていた。午前中、30分ほど作業して1時間ほど待機するサイクルだったのだが、午後にはもっとヒマになり、30分作業して2時間待機するはめにおちいった。

 このようなイベントの設営で、待機時間が発生するのは珍しくない。器材を積んだトラックが到着しなかったり重機による作業が終わらなかったりすると、生身の人間は待たされることになる。

 しかし、今回はかなり要領がまずかった。

 常時50人ぐらい手持ち無沙汰な待機組がいて、その時間も常に一時間以上あった。たまにその待機組にお呼びがかかっても、必要な人数は6~10人で、それも30分ほどで作業が完了して戻ってきていた。
 有効に働いていたのは施工業者の職人たちで、その数も多かったので、工程自体に致命的な遅れはなかった。ただやはり、スケジュールが押していたようで、何人かは残業をしていた。

 さて、最近のAKB48の話につながる。
 この舞台設定といい、宣伝戦略といい、運営側のちぐはぐな印象がぬぐいきれない。

 まず総選挙を開催する土地の選定に疑問がある。
 新幹線が通っているとはいえ、新潟はやや行きにくい場所だ。ネット上で「交通費がかかって大変」という意見を、よく見かける。
 それにバリバリの観光地と言うわけでもないので、宿泊施設に限りがあるのだ。
 現地では急ピッチで受け入れ態勢が整えられているようだが、なにぶん総選挙開催の発表から実際の実施まで3ヶ月ほどしか時間がなく、限界があるようだ。

 おそらく、昨年新設された妹分であるNGT48の拠点が新潟なので、それの宣伝も兼ねてこの土地を選んだのだろうが、それは運営側の都合である。一部報道であるように、「地元民のことを考えていないのでは?」と勘ぐられても仕方がない。

 また、作業員の中でしばし話されていたことに「なんでここ(HARD OFF ECOスタジアム)を選んだんだろう?」というのがある。
 このスタジアム、昔ながらの市民球場に似た形をしていて、雨風を防ぐのに都合がよくないのだ。
 いちおう観客席には屋根があるし、メンバーたちの立つステージにも簡単な屋根をかけてあるが、斜めからの雨には対応していない。そろそろ梅雨の時期なのに(事実設営作業中に雨が降った)、運営側はお客さんや自分たちのアイドルが多少濡れるのもやむなし、と考えたのだろうか?

 舞台の設営作業については、スケジュールがタイトで、突貫工事のイメージがある。
 6月14日がプロ野球の試合だったので、作業が開始できるのは15日からになる。総選挙の開票が18日なので、ぱっと見は設営に三日使える計算になるが、前日17日はおそらくリハーサルがあるから、実質二日の期限だ。

 たぶん運営側も、スケジュールがタイトなのは重々承知していたのだろう。だから関東からまで人を呼んだし、私もその中の一人に入ったわけだが、人間がたくさんいる=作業がはかどるわけではない。
 作業場の面積には限りがあり、その作業をするのに適切な人数というものがある。トラックの荷降ろしに50人が集まったって、実際に荷物を運ぶのには8人も人間がいれば事足りる。だいたい、とび職でも音響技術者でもない派遣の労働者がたくさんいたって、大した戦力にはならないのだ。

 私見では、今回のイベントにはかなり潤沢な予算が組まれていたのでないかと思う。雇われた人数もそうだし、リース料の高い大型のクレーン車が4台も投入されていたこともある。
 しかしもっと適切に、力の配分をするべきだったのではないか? 作業の見積もりが今一つできず、とりあえず ちぐはぐな最近のAKB その1

 どうも。役所に「転入届」を出すのが遅れて、一筆書かされたきんぎょ顔だ。いやあ、役所ってめんどくさいね!
 ただ遅れたのには理由がある。
 日雇い労働者として、「AKB48総選挙2016新潟」の会場設営に参加してきたのだ。

 普段アイドルにさほど関心がなく、テレビさえ家にない生活だが、せっかくなので色々調べ、思うところがあったので記す。

 関東からの派遣労働者の第一陣として夜行バスにのり、6月15日の朝に現地入りした。
 場所はHARD OFF ECOスタジアムで、普段は主に野球場として使われている。その前日も、ベイスターズと日本ハムの試合があった。
 フェンスがやや低めの設計で、イチローのような選手ががんばればバントでホームランが打てるかもしれない。

 朝7時。地面の人工芝を守るべく分厚いゴムマットを敷く作業から始まった。この黒いゴムマットが日光を吸収し、鉄板の上のたい焼きのように我々をじりじりと責めさいなむようになるのは、昼過ぎになってからの話だ。

 給料は悪くない。一日当たり、手当て込みで2万円弱だ。
 作業時間が朝7時から夜10時までで、他に夜行バスによる移動時間が往復で11時間ぐらいある。合計26時間ほどの拘束時間だ。
 これが割に合っているか割に合っていないかは個人の価値判断だろうが、決して安すぎる仕事ではないだろう。
 事実私はこの仕事を電話で紹介されたとき、二つ返事で快諾した。

 ゴムマットが敷き終わるといよいよ器材を積んだトラックが出入りを開始し、フォークリフトも動き出す。大型のクレーン車も到着した。
 車両は地元新潟の他に、品川、千葉、など関東のものが多かった。
 トラックから器材を降ろし、コードを電源車につなぐ。昼からはステージの組み立てが始まり、フォークリフトが組み立てた骨組みを運び、その骨組みをクレーン車が吊り下げる。ステージの鉄塔が立ってゆく。作業は確実に進んでゆく。

 仕事開始からしばらくたち、関東からの派遣労働者の多くが、声に出さないまでも思ったことがある。

「俺らいらないんじゃね?」

 やとわれた身として、そしてすでに給金をもらった身としては、このようなことを書くのは非常に心苦しいのだが、まちがいなく人間の投入量をミスっていた。

 私が確認した限りでは、アルバイトだけで最大160人ほどが働いていた。ほぼ半分は地元新潟や福井からの労働者たちで、残りが関東からの派遣組だ。
 アルバイトだけでなく、直接ステージの設営を受注した施工会社のスタッフも現場にはいたから、200人は人間がいただろう。

 明らかに人手が余っていた。午前中、30分ほど作業して1時間ほど待機するサイクルだったのだが、午後にはもっとヒマになり、30分作業して2時間待機するはめにおちいった。

 このようなイベントの設営で、待機時間が発生するのは珍しくない。器材を積んだトラックが到着しなかったり重機による作業が終わらなかったりすると、生身の人間は待たされることになる。

 しかし、今回はかなり要領がまずかった。

 常時50人ぐらい手持ち無沙汰な待機組がいて、その時間も常に一時間以上あった。たまにその待機組にお呼びがかかっても、必要な人数は6~10人で、それも30分ほどで作業が完了して戻ってきていた。
 有効に働いていたのは施工業者の職人たちで、その数も多かったので、工程自体に致命的な遅れはなかった。ただやはり、スケジュールが押していたようで、何人かは残業をしていた。

 さて、最近のAKB48の話につながる。
 この舞台設定といい、宣伝戦略といい、運営側のちぐはぐな印象がぬぐいきれない。

 まず総選挙を開催する土地の選定に疑問がある。
 新幹線が通っているとはいえ、新潟はやや行きにくい場所だ。ネット上で「交通費がかかって大変」という意見を、よく見かける。
 それにバリバリの観光地と言うわけでもないので、宿泊施設に限りがあるのだ。
 現地では急ピッチで受け入れ態勢が整えられているようだが、なにぶん総選挙開催の発表から実際の実施まで3ヶ月ほどしか時間がなく、限界があるようだ。

 おそらく、昨年新設された妹分であるNGT48の拠点が新潟なので、それの宣伝も兼ねてこの土地を選んだのだろうが、それは運営側の都合である。一部報道であるように、「地元民のことを考えていないのでは?」と勘ぐられても仕方がない。

 また、作業員の中でしばし話されていたことに「なんでここ(HARD OFF ECOスタジアム)を選んだんだろう?」というのがある。
 このスタジアム、昔ながらの市民球場に似た形をしていて、雨風を防ぐのに都合がよくないのだ。
 いちおう観客席には屋根があるし、メンバーたちの立つステージにも簡単な屋根をかけてあるが、斜めからの雨には対応していない。そろそろ梅雨の時期なのに(事実設営作業中に雨が降った)、運営側はお客さんや自分たちのアイドルが多少濡れるのもやむなし、と考えたのだろうか?

 舞台の設営作業については、スケジュールがタイトで、突貫工事のイメージがある。
 6月14日がプロ野球の試合だったので、作業が開始できるのは15日からになる。総選挙の開票が18日なので、ぱっと見は設営に三日使える計算になるが、前日17日はおそらくリハーサルがあるから、実質二日の期限だ。

 たぶん運営側も、スケジュールがタイトなのは重々承知していたのだろう。だから関東からまで人を呼んだし、私もその中の一人に入ったわけだが、人間がたくさんいる=作業がはかどるわけではない。

 作業場の面積には限りがあり、その作業をするのに適切な人数というものがある。トラックの荷降ろしに50人が集まったって、実際に荷物を運ぶのには8人も人間がいれば事足りる。だいたい、とび職でも音響技術者でもない派遣の労働者がたくさんいたって、大した戦力にはならないのだ。

 私見では、今回のイベントにはかなり潤沢な予算が組まれていたのでないかと思う。雇われた人数もそうだし、リース料の高い大型のクレーン車が4台も投入されていたこともある。

 しかしもっと適切に、力の配分をするべきだったのではないか? 作業の見積もりが今一つできず、とりあえず下請け業者に人数を依頼する方法は、予算に余裕のある地方自治体とか有名大学のやり方で、私企業ではあまり考えられない。

 総選挙の場所と日程が定まらず時間が過ぎ、メンバーの「卒業」の兼ね合いなどからあわてて決めてしまい、地元との調整も不十分で、急いで施工業者に受注したもののスケジュール的に厳しいと言われ、急遽人数を投入する事によっていろいろ補おうとした、というのが私の予想である。

 私がこの仕事を電話で紹介されたのは総選挙の十日前で、そのとき「新潟で某アイドルグループの総選挙の会場設営をして欲しいのですが」と言われた。

 すでに新潟でAKBの総選挙が行なわれることは世間にあまねく知れ渡っており、およそ無意味なぼかしだったのだが、今にして思えば「某アイドルグループ」とぼかして効果があるもっと早い時期に労働者を調達するつもりが、いろいろ不備があって遅れ、「某アイドルグループ」という言葉だけが勧誘のセリフとして残ったのではないだろうか?

 雇い主のゴタゴタは現場にまで響くというのが経験上の持論だが、今回はそれが感じられた。

 ※ ※ ※

 長々と書いたが、もう少し話は続く。
 今回のキャッチコピーである「僕たちは誰についていけばいい?」。これに違和感を覚えたのは、私だけではないだろう。

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