2016年8月30日火曜日

不思議な話 その4

 夏の終わりに不思議な話しを一つ。
 
 数年前のことだ。
 当時私は大阪の北部に住んでいて、毎週土、日は兵庫県の神戸にあるアミューズメントパークに勤めていた。片道では1時間半近くかかる距離だ。
 9時の出勤に間に合うには、7時には家を出なくてはならない。
 ところで私は完璧な朝型人間だ。文字通り日の出とともに起き出す。ゴミ漁りに向かうカラスとタメが張れるだろう。
 朝早く起きて何をしているのかというと、日によって様々だが、その日はライトノベルの大賞に応募用の原稿を打っていた。今でも続く日課の一つだ。
 しかしその朝はなぜか、手につかなかった。スランプはいつものことだが、その日はいつもと違っていた。
 
 早く家を出よう、と思ったのだ。
 作業を切り上げ、6時半には家を出る。最寄り駅までは、自転車で数分。
 普段ならこんなに早く家を出ない。近くに7時開店のスーパーがあって、そこで昼食を買うのが決まりだからだ。
 当然スーパーはあいておらず、私はそのまま電車に乗った。
 
 いつもより、一本早い電車だった。
 
 さて、電車は無事神戸三ノ宮に到着する。昼食に朝マックを買い、そのまま職場へ。
 勤務を終え、三ノ宮の町を一巡りして、駅へと向かう。
 掲示板に、お詫びの放送が流れていた。
 どうも人身事故があったらしい。場所は崇禅寺(そうぜんじ)駅で、私が行き帰りに通過する駅だ。
 既に復旧しているものの、ダイヤの乱れが起こったので、そのことを詫びている。
 事故の時間を見て、あっ、と思う。
 
 本来なら私が乗るはずの電車が、人をはねたのだった。

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