2016年12月23日金曜日

不思議な話 その7

 クリスマスイブイブに不思議な話しを一つ。
 
 
 東日本大震災で被災した街に、ボランティアに行ったときのことだ。場所は仮にR市としたい。
 
 大阪の京橋から、同じようなボランティアと共に夜行バスに揺られて、次の日の朝にはR市につく。
 被災から二年たち、津波で一掃された街は原野になっていて、よほど頑丈だった建物以外、構築物は見当たらない。街の瓦礫を集めた山に草が生い茂り、丘のようになっていた。
 
 午前中は流されたビニールハウスの組み立てを行なう。山に挟まれた地域だったが、波にのってやってきたホタテの貝殻が落ちていた。
 午後からは地元の人の案内で、被災した街を見て回る。
 学校、病院、スーパー、市民体育館など、外見だけ残り、中がしっちゃかめっちゃかになった建物をバスで巡る。
 助かった人と助からなかった人の違いや、見学しているちょうどこの時間に津波が到達したことなどの説明を受けた。
 ものすごい数の千羽鶴が置かれた市役所の跡に、鶴を追加したあと、バスに戻った。
 
 さて、私はブログを書く人間だけあって、文章を書くのが好きだ。
 こういった旅行の時は手帳を持ち込んで、何時にどこに到着したとか、何を買ったとかメモをとる。
 バスでの待機時間中、見ると自分の腕時計が止まっている。
 時計は近所のスーパーのワゴンセールで買った500円の安物で、以前に海に落っことした経験もあるシロモノだ。接触不良だと思い竜頭をグリグリ回すと、また動き出した。
 
 
 時計が止まったことも手帳に書いた。
 
 
 バスは宿へと出発する。
 その宿は廃業して久しかったのだが、地震のボランティアを受け入れるためにまた営業を再開した民宿で、4人一部屋だった。
 やることもないので、手帳をパラパラと見返していた。
 
 
 あっ、とあることに気づく。
 
 
 見学した市民体育館に津波が到達した時間と、時計が止まった時間が、全く同じだったのだ。

0 件のコメント:

コメントを投稿