『一万二千年後のレフュージア』の制作の裏話
前ページが湿っぽかったので、ちょっとテンションを上げていく。
●舞台を一万二千年後にした理由
さてさて、舞台設定として「氷河期」と「文明崩壊後の廃墟な世界」がやりたかった私。ほら、寒くて社会も崩壊していると、人々はいい感じで野蛮になるでしょ? 旧ソ連みたいに。
ところが残念なことに、この二つには時間的な差があった。
・次の本格的な氷河期→早くとも数万年後
・崩壊した文明がなんとか原形を保つ年代→せいぜい数百年。
現代文明を形作りコンクリートは、せいぜい百年ちょっとしか持たない。風雨による侵食もあるし、アルカリ性に保たれた性質がどんどん中性になって崩壊していくというのもある。今(2017年現在)、必死に各地の高速道路を修復しているけど、これもコンクリートの経年劣化の賜物だ。
ちなみに鉄筋とコンクリートが建築物におけるマブダチなのは、コンクリのアルカリ性が鉄筋を外気から保護するためでもある。
つまり話を戻すと、新宿のオサレな街並みや霞ヶ関の官公庁が氷河に沈んでいるといった描写は、現実には起こりえないわけだ。
ところがそこはフィクション。「数万年」と「数百年」の間をとることにした。
(数万年+数百年)÷2=数万年
と平均値を割り出しても数万年と変わらないからそうじゃなくて、使うのは俺的平均値割り出し法だ。一万二千年にしたわけだ。
この年月なら、なんとかニューカムの人たちが丁寧に建物を補修して使い続けたという理由づけがしやすいし、氷河期くんが「急速」にやってきたってことにすれば、建物も雪に埋もれて一石二鳥というわけだ、やったね!
もっとも一番の理由は、昔に流行った「いちまんねんと、にせんねんまえから、あ・い・し・て・るぅ~♪」っていう歌だったりするんだけど。
ちなみにこの数字、この歌を流行らせた「あなたと合体したい」アクエリオンが最初ではなくて、「トップをねらえ!」というロボアニメが元々だと思われる。主人公たちがなんやかんやで時空転移して、ようやく地球に帰ってくるシーンがあるのだが、その経過した年月が一万二千年なのだ。
●レフュージアってなに?
レフュージアは生物学の用語で、「氷河期における生物の避難場所」という意味だ。断じて「クロマニヨンズ」の歌ではない。
つまりどういうことかと言うと、地球は氷河に覆われて、多くの生物が絶滅するけれど、そんな中、氷河に覆われなかった地域では生物が生き残りますよって話だ。
前回の氷河期(マンモスが闊歩していた時代)においては、日本列島もこの「レフュージア」になった。日本は北アメリカと、植物学的に共通する植物がたくさんあるんだけど、これは北極圏を中心として氷河がせまってきたとき、その外縁地帯に植物が逃れて生き残ったからだ。ちなみにヨーロッパは氷河に覆われて、多くの動植物が絶滅した。
この「レフュージア」というのをぜひ取り入れたかったから、タイトルはこうなりました、って話だ。
話は脱線するけど、音楽フェスのスタッフのアルバイトをしたとき、矢沢栄吉と並んで「クロマニヨンズ」唯一、心惹かれた歌い手だ。
J-POPがさほど好きじゃないし、そもそも「自称音楽家」を騙った母親の害悪のせいで音楽が嫌いですらあるのだが、この二グループは確かにオーラのようなものはあった。機会があれば聞いてみることをお勧めする。
●実は『一万二千年後のレフュージア』って・・・
実は『一万二千年後のレフュージア』は、元々はS社のライトノベル新人賞に応募するために書き上げたものだった。S社っていうのは、元祖トラックに轢かれて死ぬ主人公とか泳げない海賊とかブロリーとかを生み出したマンガの超大手なんだけど、ラノベでは息は長いものの「大当たり」は出していない出版社だ。
で、『レフュージア』の原型となった作品は、無事に一次選考は通過したけど二次で落っこちた。その時は『詰んだ世界の概念鎧』なんていうラノベじゃないみたいなタイトルがついていた。これが、2015年のことだ。
ところが俺氏、この作品が書き足りないと感じていた。
当時S社には、20万文字という文字制限が設けられていた。一部の、読書感想文とかで文字数を稼ごうと四苦八苦している人たちには信じられない情報かもしれないのだが、世の中には「30万文字でもまだ書き足りないぜ!」っていう変態がいるのだ。
この増補改訂版が『一万二千年後のレフュージア』なわけだ。
じゃあ、次は設定の説明をしようかな。
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