さて、私の手元には三つの道具がある。
やすりもカッターも塗料もないし、ピンセットすら持っていない。なぜなら出張先で、拠点である自宅から400キロぐらい離れているから!
だが、仙台いう街は良さげな模型屋がけっこうあって、制作意欲もけっこう沸いて来る。
ニッパーに接着剤にマッキー(黒) これだけでプラモは作れる! 少なくとも、作れないことはないと証明する!
そんなことで始まる「出張先でもプラモ 第一回」のテーマはコイツだ。
アリイ(現社名マイクロエース)の1/72スケールの飛行機シリーズは、かなり古いキットだ。
ちらっと調べたかぎりは、20年以上前から販売されている。もともと「LS」という会社のキットの金型を買い取って自社ブランドで販売している経緯がある。
気のきいた模型屋の片隅にはだいたい箱積みされていて、価格の安さから、小遣いの少ない模型少年が最初の方に手に取るキットだ。筆者もそうだった。
で、中身だけど――
ん~~~~、すっげえシンプル。
ほんで持って、ばりがひでえw
ほんと、18年ぶりぐらいに見たけど、これ、パーツ一つ一つの処理がすげえ大変そうだ。
上の翼と下の翼のパーツの組み合わせが微妙にむずかしい複葉機だし、これ、本気で組むとなったら子ども向けの製品じゃないよなぁ。部品は少ないのに。
だけど、今回の「出張先でもプラモ」の企画、製品を選ぶ条件には合致している。
・ニッパー一つで組めること
・色を塗らないでも見栄えがすること
・貴重な休日の余暇で完成まで持っていけること
・色を塗らないでも見栄えがすること
・貴重な休日の余暇で完成まで持っていけること
では、製作開始だ。
ところで、製作に当たって最初にすることはなんであろうか?
箱をあけ、ビニールを破り、そしてパーツとランナーの狭い隙間にニッパーを挿入し力を・・・っておバカさん! 慌てちゃダメ!
最初に必要なこと、それは、パーツをすき間まで洗うことだ。
じゃぶじゃぶ~♪
これにはちゃんと理由がある。
プラモのパーツの表面には「離型剤(りけいざい)」という、金型からスムーズにパーツを取り出すための薬品がコーティングされている場合が多い。
この離型剤、あとで塗装をするときに、ビーム兵器に対する「Iフィールド」みたいに邪魔をするので、ここで落としておく必要があるのだ。
あ、洗うときは中性洗剤で優しくこすってね。台所洗剤がだいたいそうだ。
にんじんのグラッセみたいな胴体
胴体と座席のパーツの合計点数はたったの四つ。つまり、胴体右、胴体左、椅子×2といた構成だ。飛行計器盤? 操縦桿? そんなものはない!
ちなみにパイロット。パーツ分割なしの一体成型。
・・・作る手間省けていいな!
さくさくいきましょう。
下翼と水平尾翼、垂直尾翼を組んでみた。
そして、むずかしい上翼の取り付け。
九三式中間練習機は複葉機なので、胴体の上に傘のように、もう一つ翼がのっている。
翼が二つある=翼の面積が多い=揚力がいっぱい発生する。だから古い時代の飛行機は、ほとんどが複葉機だった。
九三式中間練習機は、昭和9年から量産が開始された。プロの操縦士になるための練習用の飛行機で、ほぼ全てのゼロ戦パイロットがまずはこの飛行機で腕を磨いた。
エンジンはたったの340馬力で、最高速度は214キロ。
胴体は鋼鉄のパイプの骨組みに布を張った構造で、燃料タンクはまさかのブリキ製だ。現代機なら絶対に航空審査が降りないだろうが、当時としてはこれが普通だった。
ちなみに、ほぼ同じ時代の飛行機が『紅の豚』に出てくる飛行機たちだ。そういえばライバルのカーチスの機体も、複葉機だったな。
エンジンはこうなっている。ピストンエンジンだ。
カウリング(エンジン覆い)を取り付けると色が塗りにくいので、あらかじめ塗っておく。
マッキーは、プラモデルの色を塗るために作られたわけではないので、微妙に塗りにくいが、ここは我慢だ。
ここで注意点を一つ。
エンジンのプロペラ軸にプロペラを取り付けるとき、プロペラの穴が小さくてうまく挿入できないので、軸の先端を削るか穴を広げるかしなければならない。
筆者はニッパーをぐりぐりと突っ込んで穴のほうを広げた。
ほら、人間でも、棒を小さくするのは無理な相談だから、穴の方を棒の大きさに馴染ませるでしょ?(ド下ネタ)。
仰向けにしてみる
この飛行機には「赤とんぼ」というあだ名があったのだけど、なるほど、そんな感じがしないでもない。
なお、主翼がのっぺりしていたから、流し込み接着剤を主翼に塗る技法を思いついて実施してみた。
プラモ用接着剤は、ほんの少しだけどプラモデルを溶かす効果があるので、これを本来凹んでいる部分に塗ればさらに凹んで、いい感じでメリハリがつく作戦だ。
うーん、微妙。変わったと言われれば変わったし、メリハリもついたんだけど、・・・弱冠小汚くなった気が・・・
これがお高いキットなら、少なからぬ精神的打撃を受けるんだけど、これはワンコインで手に入れた、いわば久しぶりのプラモ復帰に向けたリハビリのようなものだ。どんどん進めていく。
素組が完了した状態
続いて、日の丸を貼りましょう。
プラモデルのシールはデカールと呼ばれ、水で塗らしてずらすように貼り付けるタイプがほとんどだ(ガンプラは除く)。
子どもの頃、ガチャガチャから出てくるタトゥーっぽいシールを腕とかに貼り付けたことがあるかもしれないが、あれと同じ原理だ。
子どもの頃、ガチャガチャから出てくるタトゥーっぽいシールを腕とかに貼り付けたことがあるかもしれないが、あれと同じ原理だ。
貼れたら、めん棒で水気を取りつつ、しっかりと押える。
このキットは古い製品だから、デカールも貼りやすいとは言えない。やぶらないように慎重にやろう。
このキットは古い製品だから、デカールも貼りやすいとは言えない。やぶらないように慎重にやろう。
実は、もの足りなかったので、張り線を自作して取り付けた。これは翼の強度を保つためのものだ。建築物で言う「筋交い」だな。
後ろから見てみたの巻き
垂直尾翼と水平尾翼のところにも忘れず。もとはダイソーの針金で、φ0.28ミリ。本当は、もっと細いのを使ったほうがいい。
実は、おもちゃっぽい「照かり」が気に入らなくて、「つや消しスプレー」だけは完成後に吹きつけている。これは、光沢を消す作用があって、これを使うだけでさも「実物のように見える」魔法のスプレーだ。
では、キットの総評を。
部品の組みあわせやすさとか、パーツの再現度とかは、さすがに時代を感じさせる。
価格が安く、子どもが手にしやすくはあるのだが、主翼や着陸用の脚を取り付けるとき微妙に部品の「すりあわせ」が必要で(でないと斜めになる)、少ないパーツ数のわりに作りやすいキットとは言えない。
ただ、「組む楽しみ」は十分感じさせてくれるし、何よりあまり日の当たらない「練習機」という機種の製品化は貴重だ。
パーツの色が実機と同じ橙色なので、ガンプラのようにほとんど色を塗らずとも完成品が楽しめる。今回の趣旨にぴったりだ。
塗装が苦手な人、塗料がない人にも勧められる。
何より昔作ったキットを久しぶりに手にとらせてもらって、いい休日を過ごさせてもらった。
アリイはマイクロエースと名を変え、現代では鉄道模型に力を入れているようだけど、こういうキットも残して欲しいものだ。
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