2022年2月22日火曜日

強いられた人狼で、因果を断つーー「レイジングループ」 簡単な解説


前々から「プレイしてえな俺もな―」と思っていたけどついつい後回しにしていたゲームに「レイジングループ」がありまして、今日はそのレビュー的なものを一つ。


注)
・このゲームはリアルSAN値を削ってくる場面があります
・使われている画像は、すべてプレイ中のスクリーンショットとなります
・完全ではないまでも、少しのネタバレ要素があります



あらすじ




主人公の房石陽明(ふさいしはるあき。漢字変換がやや面倒)は、諸般の事情で山奥をバイクでツーリングしていた。

こういう出だしだと、主人公が道に迷うかバイクが事故るかで事件に巻き込まれるんだけど、陽明は丁寧に両方踏んで、「休水(やすみず)」という地域に迷い込む。

そこは、不可触民とまでは言わないまでも、周辺からつまはじきにされている人々が住む地域だ。

そこでは「霧」が出た日に、「宴」と呼ばれるリアル人狼まっしぐらな因習が開催される。

つまり、ただでさえ少ない村人を集め、「おおかみ」を特定し、ご神木扱いの松の木に吊るすってイベントだ。

主人公はこの脱出困難な「人狼」にかかわり、解決するために奮闘してゆく。




システム

ジャンルはホラーADV。テキストを読んで選択肢を選んで大いに怖がる(あるいは怖がりそこなう)アレだ。

ただし、最初のうちは選択肢は限られている。




こんな感じに、下の「?」マーク付き選択肢(キー04)は選べない。

物語を進め、イベントを見て、「ああ、これはこういうことなんだ」って知って(ゲーム的にはキー・○番を得て)、そののちキーのついた選択を選べるようになる。

過ぎ去った選択肢はどうやって選ぶの? とお思いのそこのあなた、問題ない。

ちゃんと死んで元からやり直せる。というか、キーのゲットはほとんどの場合死をともなう。

そう、このゲームはループものなのだ。

主人公はトライアンドデスを繰り返しながら、謎を解き明かしていくのだ。




シナリオ

「レイジングループ」は「人狼ゲーム」をモチーフにしたゲームだってのは、事前知識として知っていた。ただ、予想以上に人狼ゲームしていた。




宴こと「黄泉忌みの宴」とは、黄泉から現世に戻り、人に紛れ人を殺す「おおかみ」(3名)を見つけ、処刑するために執り行われる儀式だ。

おおかみたちは、動機はそれぞれながら、必ずといっていいほど一晩に一人殺す。

つまり村人側は、おおかみを特定して「くくる(絞首)」するしかない。

現実世界であれば「いや警察呼ぼう」だし、フィクションであっても、ともすれば無茶な設定になりかねないが、「レイジングループ」ではそのあたりの舞台設定を丁寧に説明してくれる。


すなわち、周りの地域全体に広がる因習、神道以前の古い信仰、森深く閉鎖された空間、「長者」たちによる政治的支配――

「宴をやる(やらなければいけない)」「誰かを吊る(吊りたい)」


などといった心理が、キャラクターの多数の中で醸成されてゆき、「宴」の開催へと流れてゆく。そして、惨劇へとつながるのだ。




人狼


さっき、このゲームは「ループもの」だと書いた。





それはすなわち、「前世では仲良くやっていたのに!」って感じの、キャラクター同士のやり取りも頻繁に起こる。

それにより、キャラの性格がありありと透けて見えるのが、またおもしろいところではある。

いちおう言っておくと、「人狼ゲーム」としては、ゲームにがっつり介入できるわけではない。




▲推理メモ


誰がどの役職かって推理する楽しみはあるものの、


「こいつがおおかみに違いないから吊ろう!」


って選択肢は基本的にないし、そもそも繰り返すループの中で「主人公その人がおおかみ役」を拝命することもある。




面白い部分


主人公の陽明は、死ぬことで宴が始まる前の5/11に戻れるという特殊事情の担い手であるし、メタ的に言うなら整備されたチャートによって、一度テキストを読み進めた地点にならどこでも行ける。

つまりそれだけ死にやすいってことなんだけと、このゲーム、死が一つの娯楽になっている。




こいつが、房石が死を迎えると現れる謎の『ひつじ』さんだ。

バットエンドにいちいち素敵な名前を与え、答え同然の的確なヒントをくれる。

あと、中盤に「宴」に参戦する人が強キャラで好きである。




この橋本氏、戦場カメラマンの渡部陽一にボンレスハムを合成したような人で、最初のループではモブキャラ同然の死に方をし、2回目に至っては外で用をたそうとして惨殺のネタキャラだった。


3回目にようやく参戦して、

「さーて、社長出勤だからどんな爆弾をもちこむのかなー」

と舐めてかかっていたら、この人自身が爆弾だった。


ブログ主は、

「こういう場面で自分だったらどう答えるだろう」

と考えながらプレイしてたのだけど、このボンレスハムの一挙手一投足に「クッソw」って言いながら応じていた。


3回目のループは不幸にして主人公その人が「おおかみ役」のターンだったんだけと、いや、ハムの人の強いのなんのって。

彼のおかげで、2回ガメオベラ(GAME OVER)したぜ。




ちょっとした考察

※軽いネタバレ注意

じつは、この「強いられた人狼」の仕組みは、「レイジングループ」と世界観を共有するゲーム「デスマッチラブコメ!」で、ある程度は解説されていたりする。


(「レイジングループのエクストラシナリオ「羊VS報告書の山」にも解説がされているけど、このシナリオはどちらかといえば「デスマッチラブコメ!」の解説になっている)



キーワードとなるのは、「ジンクス」だ。


▲デスマッチラブコメ! より


「ジンクス」は、ある人とある人(あるいは、ある人々同士)の中で、「これこれはこうだ」と了承されたことによって、そのことが現実になる超常現象のこと。

「デスマッチラブコメ!」内では、「雨男」と周りから思われた人が実際に雨を降らす能力を獲得する、といった説明がなされている。

これを「休水」に当てはめると、人為的トリックを除く超常現象は、「休水集落」という閉鎖空間に暮らす人々の中で、神がかり的な力が「存在する」と認められたことによって、起こった現象といえる。




「デスマッチラブコメ!」では他に、「陶冶(とうや:鋳型にはめ込むように、役に立つ人間を作り出すこと)」についての説明も軽くなされるのだけど、休水の住人は、まさに周りの状況に「陶冶」されていったといえる。


実はジンクスでは、部外者の陽明やジャーナリスト2名にまで実際に影響を及ぼした理由がいまいち判然としないのだけど、部分的にはこれで説明できる。





まとめ

読み応えのある伝奇小説に、人狼ゲーム+ループ能力の要素を加えることで、一風変わった和風サスペンスになっている。


力強く面白い作品、と言えるだろう。


一部批判にある「トリックが興醒め」と言うのは、自分は感じなかった。ただし、


「怪奇小説かと思ったら、ドラマの『TRICK』の世界に迷い込んでいた


な、とまどいは感じると思う。



このゲームがオススメの人は、まず、人狼が好きな人だろう。それと、「クトゥルフ神話」が好きな人は絶対好きになると思う。

あと、「ひぐらしがなく頃に」に抵抗がない人もイケるだろう。ドラマの『TRICK』が好きな人も楽しめるかもな。

上の作品たちだと、推理なのか猟奇なのかギャグなのか判然としないかもしれない。

が、「レイジングループ」は、それらを複数の魅力を併せ持つ作品と言える。




 

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