2020年11月29日日曜日

東京都最高峰「雲取山」でご来光を見てきた(2020年晩秋)



ルート:鴨沢ルート

()は到達時間

奥多摩駅(0840)→鴨沢バス停(0920)→登山道入り口(1000)→七ッ石山・まき道分岐(1200)→石尾根(1400)→ダンシングツリー(1425)→雲取山頂上(1600)→雲取山荘(1640)


東京都も、西の方は田舎でありまして、とくに埼玉と山梨の県境はなかなかの山岳地帯になっている。


東京最高峰もここにあって、名前を雲取山という。


標高2017メートル。日本百名山に選ばれている。


それで、2017年に標高と年度が同じだぜ! ってことで一部でプチブームになったのだけど、2020年にもちょっとした話題になった。


映画化もされたマンガ『鬼滅の刃』の、主人公兄妹の出身地なのだ。


「ほほう。つまり聖地というわけだな」


アニメの聖地には賞味期限がある。


とゆうわけで、登ってきた。



●奥多摩駅→登山口→石尾根


自宅最寄駅から始発に乗ってJR青梅駅へ。


青梅駅で乗り換えて、ようやく奥多摩駅に着く。



ここからバスに乗って20分ほど揺られ、「鴨沢バス停」で降りる。登山口に続く階段のすぐ横のバス停だ。


▲この横の階段から登る。ちなみにバス停はだいたい標高546メートル


ここから、標高200メートルを一気に登る。





こんな道になっていて、かなり歩きやすい。


まあ、それなりにキツイ坂だし、30分近く歩くことになるんだけど。





山道とアスファルトの道を歩いて、ようやく登山口に到着する。標高768メートル地点だ。


頂上までの高低差、おおよそ1250メートル。だいたい10キロ歩く。


このぐらいになると、ようやくハイキングを越えた登山らしくなってくる。



よし、登るぜ。





しばらくは、せまいが歩きやすい道が続く。


ブナ林→スギ林→ブナ林と、変化はあるけどすぐに景色に飽きるコースだ。



▲なにかの建屋。『鬼滅の刃』の炭治郎は、こんな家に住んでいたのかもしれない。


なお、このルートは、オカルト業界では首だけで飛ぶことで名高い平将門が、敗走して通った道だと言われている。





道中にも、エピソードを伝える看板が10個ほど立っているぞ。



それにしても――



「ちょっと、きついな・・・」


距離が10キロもあるので、もうちょっとダラダラ登るのかと思ったけど、意外に急な箇所がある。


「ニコ動に上がっている登山動画で予習してきたつもりだったのだが、やはり映像だけではわからないことがあるな」



▲香月堂のパウンドケーキ。おいしくて、カロリーもそこそこあるので、携行食として採用


お菓子でカロリーを補充しつつ、小雨の中黙々と登っていく。



▲霧の境い目。向かって右はたちこめる霧。左は、晴れている様子。

ちょうど、道が山の東から南側に回り込む辺りで撮影


なお、ニコニコ動画で上がっている有名な速度記録は、バス停から3時間51分で頂上で、これはかなり早い。普通は5時間~6時間かかる。


ふもとの奥多摩駅から4時間半で頂上という記録もあるが、これはトレイルランの人である。


ちなみに、トレイルランの人が走ったコースは、それなりに山登りに慣れた人でも8時間近くかかる道程である。




トレイルラン勢こわー戸づまりしとこ。



自分の計画としては、頂上に14時半に着く予定だ。9時半から登り始めたから、だいたい5時間の行程だな。



それにしても、足が張ってきたな・・・


高めの段差に足をかけるたびに、足が攣る一歩手前の状態になる。


ついに、「あ、やば」って思うぐらいに足が張る。


ふふん、足が攣りそうになる経験は、登山ではお馴染み。


こういうときは、慎重に動いて、アキレス腱を伸ばせば・・・



▲この瞬間の俺の気分



ありのままに起こったことを話すぜ――


足をいたわってストレッチしたら、ふくらはぎに激痛が走った。


非常に悪いことに、身じろいだ時にもう一方のふくらはぎも攣って、あえなく地に倒れ伏す羽目になった。


「ははあん、これが二撃決殺というやつだな!」


って、笑えるかああああ!!!


くっそいってえ。


足が攣ったとしか形容できない痛さで、のたうち回りたくても痛くて動けない。


道の真ん中で倒れたので、邪魔にならないよう、何とか匍匐で道の脇による。


避けたところ、後続の登山者が、黙々と抜かしていく――


おいコラ。人が倒れてるんだから、一声かけるのが礼儀ちゃうんか!




余りにも痛かったから、本気で撤退を考えた。


雨も降っているし、まだ3キロぐらいしか進んでいない。


だが、今日泊る雲取山荘に予約を入れてしまっているし、それに一度登り始めた山をあきらめたことはないのだ。


「気力体力を鍛えるべく登っているんだから、もうちょっとがんばってみるか・・・」


経験上、攣った足は歩いていると自然に治る。


結局、小一時間ほどリュックを椅子代わりに休んでから、歩みを再開した。




普通の倍近い時間をかけて、ようやく尾根筋に出る。



●石尾根→頂上



ここ、ニコニコ動画で見た道だ!


広く、ゆるやかで、開放感のあるかなりいい感じだ。


なお、もともとはもうちょっと狭い道だったのだが、トレイルランニングの人々が走りまくったおかげで削れて広くなったらしい。あとで雲取山荘の人にそう聞いたぞ。



一部でおもしろい形と話題になっている「ダンシングツリー」。

尾根道では、こういうねじ曲がった樹はたまに見かける。



ヘリポート。山岳救助や物資の補給につかわれる。




それにしても・・・


「足の痛みが、全然ひかねえなぁ」


今回はひどい攣り方をしたらしい。苦痛が全然、収まらない。



今日のためにコンディションを整えてきたので、体調はむしろいいのだが、足が気持ちについてこない。


特に、広い尾根道をぬけたあとの最後の坂がきつくて、「いってえなぁ」って内心でつぶやきながら登ってた。


実にもどかしい、道であった。




だが、それでも、歩いていればいつかは目的地に着く。




頂上の目印だ・・・






到着!



ついたのはちょうど16時。


当初の予定より、1時間半も遅れたわけだ。


ちなみに、バス停から6時間半かかってるんだけど、ネットで調べた限り、これはもっとも遅い記録だぞ。



最低記録を持つ男、俺氏!



さて、雲取山は、富士山が見えることでも有名である。



まあ、雲海におおわれて見えなかったんだけど。



今回雲取山に登ったのは、単に頂上を踏むだけではない。


御来光を見るためでもある。


というわけで、明日に備え、さっさと山の反対側にある山荘を目指す。


下りはなかなかのこう配で、変に足をかばっていることもあって、膝の上の筋肉まで痛くなってくる。こんなところ、痛めたことねえぞ。


30分の道を40分かけて、ようやく、木々の間から、ぼんやり灯った電灯が見えてくる。




俺よ、あれが山荘の灯だ!



▲暗かったので翌朝撮影



俺「すいません、予約していたものですけど」

従業員「お待ちしておりました。山荘の説明をいたします」


俺氏、部屋とトイレの場所、そして夕ご飯の時間を聞く。


俺「湿布とか、売ってますかね?」

従業員「売ってないですね」


やっぱりな。持ってこなかった俺が悪いのだが。

 

なお、今日の泊り客の中で、俺が最後についた人間だったようだ。




貼られているポスター。そういえば、あおいちゃんたち、雲取山も登っていましたね・・・


アニメが終わり、ブームがひと段落した今でも、登山口近くとかではちょいちょい見かける。


こういうポスターは何年も張りっぱなしになることが多いから、しばらくは宣伝効果があるだろう。


まあ、山をやる人は萌えアニメとかあまり関心がないんだけど。『ヤマノススメ』よりも『神々の頂』で盛り上がる人が多いぞ。


(『神々の頂』って、登場人物の結構な数が山で死ぬ作品なんだけどなぁ・・・)



●雲取山荘


それで、山荘について軽い説明。

雲取山荘は、山小屋をグレードアップしたような施設である。

素泊まり5800円、食事は一食1600円。石井スポーツの会員カードを持っていると、500円値引きしてくれる。




食事は、標高2000メートルの高さにもかかわらずちゃんと一汁三菜そろっている。ご飯は、1回だけならおかわりできる(ただし先着順)。


個人的には、豆腐が出てきたのはうれしかった。ここまで運んでくるのは大変だったろう。


水場は、山荘出て向いの管からちょろちょろ出ている。事実上天然水が飲み放題だ。ただし、冬場は凍結する。


トイレは、きれいなのがあって、男女兼用である。山小屋では普通だ。


なお、水道が通っていないので風呂はない。これも山小屋では普通。

だから、薬局とかで売っているボディシートを持ってくる必要がある。まるで貧乏な時代のオードリー春日だ。



携帯の電波は、ドコモとauは入る。


ソフトバンクは、なぜかトイレでかろうじて入るけど極めて不安定。俺が使っているワイモバイルももちろんアウトだ。




泊る部屋はこんな感じ。基本は相部屋だ。コロナ対策で、透明な仕切りがある。


なお、布団はちゃんと一人一枚ある。


なにをあたりまえのことを? と思うかもしれないが、山小屋では2人で1枚、繁忙期だと5人で3枚とかざらにある。1人1枚は贅沢なのだ。


1階の廊下には本がたくさんある。山関係の本から、新書、小説などだ。今西錦司の全集なんてものもあったぞ。

やや古いものが目立ちが、読書家なら飽きないだろう。


夜ごはんの時間は18時から、朝ごはんは5時からである(季節によって変わる)。


消灯は20時半である。すげーな、自衛隊の新隊員でさえ22時までは起きていていいのに。なお、自衛隊と違って、各々が宿泊する部屋で明かりを点けてだべったりしておく分には問題ない。


もっとも、疲れているから21時ぐらいには眠ってしまうのだが。

それで俺も、相部屋になったおっちゃんとそこそこだべったら、21時半には床に就いた。


明日は早起きして、ご来光を見るのだ。




●ご来光


山荘の朝は早い。


朝5時には起きて、支度をする。


まあ、起きたというより、他の登山者が4時半ぐらいには準備を始めるから、物音で目が覚めたんだけどな!


それで荷物をまとめたら、その荷物をいったん山荘に置いて、頂上を目指す。


この時間だと暗いのでヘッドライトがいるし、場所によっては霜が降りて滑る個所もある。


だが、荷物を全く持たないので、かなりラクだ。


足の痛みもある程度はひいているし、昨日下ったときよりも早い時間で、登りきる。





それほど日の出に執着があるわけではないけれど、やはりいいものだな。





運がいいことに、昨日は見えなかった富士山も見れた。

雲海が敷き詰められていて、まるで歩いていけると錯覚しそうだ。


実は、今年は富士山に登るつもりだったのだ。


ところがコロナの影響で入山禁止になって、「やった、他の登山客が減って登りやすいぞ」と喜んだのもつかの間、「パトロールをして登山客を防ぐ」とまで言われて断念したのだ。


まあ、「富士は見て楽しむ山」なんて言われるし、見て楽しむなら、この場所はなかなかのスポットではないだろうか。





満足したので下る。


帰って、日常に戻らなければいけない。


ルートは「三峰ルート」。

雲取山荘から埼玉の奥秩父にまで降りるルートだ。



●下山

ルート:三峰ルート

()は到達時間

雲取山荘(0700)→大ダワ(0740)→白岩山(0900)→霧藻ヶ峰(1111)→三峰神社バス停(1300)



山頂から埼玉県の奥秩父にある三峰神社まで続く山道で、いくつかの峠と山の頂上を越えていく。


距離はおおよそ10キロ。


ある程度健脚向けのルートで、登るにはそこそこの体力が求められる。


まあ、下るだけの俺にはあんまり関係ないけどな!


だけど、人通りがまばらなのは事実で、様々な動物とエンカウントする。





何の変哲もないシカだけど、山の中で会うとテンションが上がるぞ。


他にも、アカゲラの仲間をよく見かけた。樹を叩いて虫をほじくっていたぞ。あと、サルの声も頻繁に聞いた。





白岩山頂上近くの道。向かって右は針葉樹の原生林。左は、むかしの伊勢湾台風で壊滅した林。



白岩山小屋跡の裏にある展望台からの山脈




道が狭く斜めっているため、鎖が設置してある箇所。


別に鎖を使わなくても通れる。



霧藻ヶ峰頂上。休憩できるベンチがある。

山荘からここまで4時間近くかかっているものの、帰路のだいたい3分の2は消化した。




炭窯(すみがま)の跡。昔ながらの石積みのもので、炭治郎が炭を焼くとしたらこんなのを使っていただろう。



炭窯があるということは、人里まで降りてきた証拠だ。


そして――


ついに――





ふもとまで降りられた・・・


山荘からここまで5時間半。登りみたいに時間がかかってしまった。


三峰ルート、なかなかであった。


ネットだと、標高(出発地点)が高いから日帰り登山に適している、と言っているところもあるけど、峠を何度も越えるので、このルートでの登りはあまりおススメしない。


『ヤマノススメ』では登られているけど、ほら、彼女らってもう並みの高校生じゃないから。かえでさんとか、大学の登山部でもそれなりに通用する技量だから・・・



もしこれから登られる方、ストックを持ってひざの負担を減らして登ろう。


●奥秩父


三峰神社近くで保存されている古民家。ポケモンGOのジムになっている。



バスはだいたい一時間に一本。西武秩父駅行きと三峰口駅行きがある。





で、三峰口駅。昭和初期の駅みたいだ。




事実古い駅で、駅の裏には機関車の転車台(方向転換するためのでっかいターンテーブルみたいなの)が残されている。

前は機関車も展示されていたみたいだけど、今は撤去されている。




駅前の風景。奥秩父の山並みだ。



大昔、クレヨンしんちゃんの一番初めの映画『アクション仮面VSハイグレ魔王』を見たとき、アクション仮面の秘密基地が「埼玉奥秩父」にあるって、まつざか先生が言っていた。


それ以来ずっと、20年以上「奥秩父ってどんなところだろう」と思っていたのだけど、こんなところであったのか。

なるほど、秘密基地を設けるにはちょうどいいかもしれない。物資の補給は大変そうだが。


個人的には、『鬼滅の刃』の聖地に来たというより、アクション仮面の秘密基地がある場所に来た、って感じだ。



というわけで今日は、雲取山に登って奥秩父も見てきましたよって話。

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