2024年3月9日土曜日

ロ式輸送機を作る−−ドイツレベル ハドソンMk1 改造



昔々、日本に「ロ式輸送機」って飛行機があった。アメリカの「ロッキード・スーパーエレクトラ」輸送機のライセンス生産品だ。

陸軍の空挺部隊の輸送機とかに使われたのだけど、知名度が低く、プラモデルでもキットとして存在していない(昔、個人の方が出したレジンキットはあったようだ)

ないなら、他の飛行機から改良して自作しよう! っていうのが、この記事の内容


★目次

1. 使うキット
2. 組み立て開始
3. 塗装
4. 完成
5. ギャラリー



1.使うキット

使うキットはこの二つ



ドイツレベル社の「ハドソンMk1.Mk2」とハセガワの「九九式襲撃機・偵察機」だ

ハドソンは、簡単に言うと「ロッキード・スーパーエレクトラ(イギリスの姿)」で、ロ式と寸法、大きさがほぼ同じ。

九九式襲撃機は、ロ式と同じエンジンを積んでいるので、換装用だ。つまり、エンジンのためだけに機体丸々買ったわけだな。


本体となるハドソンの中身を確認



ぱっと見、悪くはない

実はドイツレベルという会社は、自社で金型を製作せず、東欧あたりのメーカーから金型を買って再生産するのを得意とする会社だ。

つまり、ハセガワの九九式双発軽爆撃機(元は20世紀に店じまいした会社の金型)のように、金型の設計がとんでもなく古い可能性があるのだけど、このハドソンはそんなに古く見えない。

さっそく組んでゆく。


 
2.組み立て開始



コクピット。なんとなくもっさりした外観以外は、特に問題ない。





で、胴体の中はこんな感じのパーツわけだ(塗装済み)

実際のロ式をライセンス生産するにあたって、客室を再設計したらしいのだけど、資料が雑な写真一枚しか見つけられなくて、どうもよくわからない。当然、白黒なので、色も不明だ。

今回は、当時の陸軍機(ロ式は陸軍の所属)共通の、抹茶みたいな緑で塗っている。




はめ込んだ窓を接着中。大きさは胴体の窓枠に対して、おおむねぴったり合うけど、ちょっと窓に「ヒケ」が見られて、ちゃんとした透明じゃない。

内部にヒケがあるので、コンパウンド剤で磨いてもきれいにならない。




ハドソンのキットには、他にドア部分の窓ガラスのパーツが入っている(ハドソンを組む際は使わない)。





ロ式にこの窓ガラスがついていたかは不明だけど、せっかくなのでとりつけることにする。写真は、そのための穴あけ中。




胴体の左半分に、中の操縦席とかを組み込んだ状態。

ロ式には、旅客機みたいに客席が並んでいたのだけど、今回は座席のない貨物用ってことにしている(そもそも客席のパーツがないので組めない)



 
続いて、翼を組んで、エンジンを取り付ける。




ハセガワの九九式襲撃機のエンジンとプロペラとカウリング(エンジン覆い)



いちおうエンジンは、他社のキットとは言え、こんな感じではまる。

ロ式輸送機は、ライセンス生産するにあたって、国産のハ‐26エンジンに換装して製造された。

このエンジンは、オリジナルのエンジンより馬力で劣っていたけど、他の飛行機にも使われていたから、整備、部品の調達が共通化できる利点があった。




カウリングとプロペラを取り付ける。

ただ、隙間が空くので、パテで埋める必要がある(白い部分)。





パテで埋める必要があるのは他にもあって、胴体と、主翼と胴体の間に、田んぼの側溝みたいな隙間ができる。


結構手をかけなきゃいけないハドソンのキットだけど、ただ、このキットは、ロ式を組みにあたって代えがたい利点がある。



▲銃座が乗っかる穴を覆うパーツ
 

ソリッドノーズのパーツと、銃座が乗っかる穴を覆うパーツがついているのだ。




ハドソンは爆撃機なので、爆撃観測のため機首の先端は窓がいっぱいだし、敵を追い払うための回転式銃座が背中についている(箱絵を参照)。
 

どちらもロ式輸送機には不要なものなのだが、この「ハドソン」のキットには、ガラス張りの機首と差し替え可能なのっぺりした機首(ソリッドノーズパーツ)と、銃座のない普通の胴体を作るためのパーツが、入っているのだ。

どういう経緯かはわからないが、とにかく、パーツを自作することなく、ロ式の再現が可能ってわけだ、すばらしい。

(おそらく、もともと「エレクトラ」のキットがあって、そのキットを元に「ハドソン」のキットを製造・販売したから、パーツが紛れ込んだのだと思う)




ただ、銃座が乗っかる部分を覆うパーツにも、結構な隙間ができる。パテ埋めが必要。




胴体部分が完成。どことなく、短剣をほうふつとさせる。




主翼をつける。付け根の白いラインが、パテで埋めた部分。




正面から見る。どことなく九六式陸攻に似ている。

主翼は、普通につけようとすると取り付け位置がぴったり決まらないので、正面から見て左右どっちの翼も同じ角度になるよう気を付ける。

次に、脚回りの組み立て。




主脚の部分は、一番むずかしいかもしれない。

脚を支える細い棒を、脚の収納部のゴマ粒サイズのくぼみに取り付けなきゃいけないのだけど、収納部に指が入らない。ピンセット必須ではある。



主翼の裏側に、フラップ・トラック・フェアリング(フラップを操作するレールとかが入っている)をつける。


↓↓↓


最近のジェット旅客機にも通じる、近代的な設計だ。


次に、コンパウンド剤で細かい傷を消す。



いろんなところにパテを盛る → 削る を繰り返したので、あちこちに細かい傷ができたのだ。コンパウンド剤は研磨剤のことで、細かい傷を隠せる。




3.塗装




いよいよ塗装に入る。窓ガラスの部分にマスキングテープを貼っているところ。




 
塗装に使ったエアブラシ。昔、知り合いからもらったもの。ちょくちょく使っているが、いまだに使いこなせていない。
吹き付けしやすい塗料の濃度に、ちゃんと調合できない・・・





塗装中・・・



窓枠の塗装の時、色がはみ出たので、ペイントクリーナーを含ませたつまようじでふき取っているところ



ここで、ちょっと実機の説明を少々。

 

ロ式輸送機のもとになったのは、アメリカの旅客機ロッキード L-14 スーパーエレクトラという飛行機だ。

そのスピードは時速400キロ。1930年代の当時のだいたいの軍用機より高速だった。

ところが、予想以上に販売は振るわない。
ぶっちゃけると、輸送機はスピードより、安い運航費で安定してたくさんの荷物を積める方が大事だった。

アメリカじゃ、DC-3っていうライバル機がいたのだ。こいつはライセンスも含めて1万機以上生産された。今で言うボーイング747の立ち位置だな。

ただ、スーパーエレクトラは幸いにも、イギリスと日本が興味を持った。なんだかんだでスピードが速いからな。

時の日本陸軍は、これをロ式輸送機として制式採用して、ロッキード社から国内製造権を購入していた立川飛行機(今は立飛ホールディングス)に対して、国産エンジンに換装して製造を命じた。
 


4.完成


はい、これがその、ロ式輸送機です。





プロペラにはスピナー(空気の流れをよくするためのとんがり状のパーツ)をつけたけど、残っている実機の写真にはついていない。

ただ、同じ時代の零式輸送機にはついているので、今回の作例にもつけた。


ちなみに、ロ式輸送機の改良型に一式輸送機(見分けはほとんどつかない)があって、これも陸軍に配備された。



5.ギャラリー







ちなみに、ロ式実機が飛んでいた時代、こういう上からの角度で軍用機を撮影するのは厳禁だった。翼の全体のかたちがわかるのが、NGだったらしい。





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