新居に引っ越して、一ヶ月がたった。つまり7月である。
新しい土地はいつも強い風が吹いていて、今の時期でもまだ涼しい。夜など窓をしめるし、タコ足ハンガーも部屋の中にしまう。でないと風の力で高速回転して、ついに折れて飛んでゆくのだ。
それにしてもこの風、夏はいいが、冬も吹きっぱなしだろうか? 今からふるえる次第である。
で、夏なので怖い話ではないが、不思議な話をしたい。
実体験である。
当時、兵庫県の神戸市にあるアミューズメントパークにアルバイトに入っていた。
いつもは夕方に上がるのだが、その日は夜まで働いていた。夏休み中で来客が多いことがわかっていたので、あらかじめ決められていたシフトだった。
いつもは夕方に上がるのだが、その日は夜まで働いていた。夏休み中で来客が多いことがわかっていたので、あらかじめ決められていたシフトだった。
職場を出たときには、夜の九時をまわっていた。
アルバイトが終わった後は、神戸の中心地である三ノ宮で本屋めぐりをするのが日課だった。
アルバイトが終わった後は、神戸の中心地である三ノ宮で本屋めぐりをするのが日課だった。
あかつき書房→ブックオフ→ジュンク堂→清泉堂書店→らしんばん→メロンブックスと回る。ここにいくつかのカードショップ、イエローサブマリン、模型屋のボークスを混ぜれば、バイト終わりの日常が完成する。
すでに九時を回ったその日は当然、店のどれもがあいていない。
それでも私はなぜか、ブックオフ三ノ宮センター街店に行くことにした。
すでに閉店していることは重々承知していたが、なぜか足が向いた。
すでに閉店していることは重々承知していたが、なぜか足が向いた。
巨大な商店街のような構造のセンター街は、恐ろしくさみしかった。
左右全てのシャッターが降り、人通りはなく、薄暗い道のはるか先まで見通せる。
左右全てのシャッターが降り、人通りはなく、薄暗い道のはるか先まで見通せる。
センター街の海側の入り口に立っている、生田神社の大鳥居が、なぜか印象に残った。
あたりまえのことながら、ブックオフは閉まっていて、テナントビルにさえも入れない。私は岐路につくべく、阪急電車の三宮駅へと向かった。
乗るはずの電車が、一本遅れた。
特急か、快速急行か忘れたが、とにかく大阪方面に向かう電車に乗った。もう何百回と乗っている路線だ。
突如ガタンと、ギアをはずす音が聞こえ、強めのブレーキとともに電車がある駅に停車した。普段は各駅停車しか止まらない、うす暗い小さな駅だ。
突如ガタンと、ギアをはずす音が聞こえ、強めのブレーキとともに電車がある駅に停車した。普段は各駅停車しか止まらない、うす暗い小さな駅だ。
アナウンスが聞こえる。
『前方の電車にて、人身事故が発生しました――これより電車は西宮北口駅まで前進し、そこで停車いたします――阪神電車による振替輸送を実施しますので・・・』
西宮北口駅の隣、武庫之荘(むこのそう)駅にて、飛び込み自殺が発生したのだった。
※ ※ ※
私は、乗るはずだった電車をなぜか一本ずらして、その乗るはずの電車が自殺者をはねる体験を三回している。
ある種の危険感知能力があるのだと思っているが、あまり気分のいい話ではない。
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