数年前、東北に住んでいた。太平洋側の沿岸部を中心に、仕事をしていた。
●今回の旅の大まかなルート
遠野市立博物館(岩手県遠野市) → アメリカンパラダイス(岩手県北上市)
白石城(宮城県白石市) → 霊山(福島県伊達市と相馬市) → 那須どうぶつ王国(栃木県那須塩原市)
「仕事」としていた東北に、ふと、観光で訪れてみようと思った。
きっかけは「そういえば、遠野博物館を見そこねたな」と、思い出したからだ。
岩手に住んでいた時、遠野市には一度観光で訪れていた。だが、時間が足りなくて博物館を見れていなかったのだ。
ふとホームページをのぞいてみると「遠野物語と呪術」なる魅力的な企画展をやっている。
「お盆休みは、遠野博物館の呪術展を見る」
まず、それが決まった。
そして、「霊山(りょうぜん)」という山に登る計画もあった。
この山は福島県のやや南にあって、地元では観光地として知られている。
この山を知ったのは洒落怖のサイト(心霊関係の記事が集まっているところ)だったが、それとは関係なく、登山するになかなか面白そうな山であった。
「呪術と霊山」
それが、今年のお盆のテーマとなった。
★遠野市
※ルート
遠野市立博物館 → 鍋倉公園 → とおの物語館 → ジンギスカンのあんべ
長いようでいて短いお盆休み。
他に所用があることもあって、1泊3日の強行軍となる。
関東にある住処を、夜中の一時に出発し、ひたすら下道を進む。
東北に行ける下道として、国道4号と6号があるが、今回は6号を使った。
道沿いにある道の駅で、ポケモンマンホールを撮影するためだ。
▲道の駅楢葉(ならは)で撮影
ポケモンは、ものすごい好きというわけではない。齢30を超えて、もはや現役のプレイヤーでなくなって久しい。
それでも、ポケモンマンホールが気になっていたのは、これが東日本大震災の「復興支援」の一環として、設置されたものだからだ。
自分の東北での仕事とは、復興支援関係の仕事だった。多少の縁を感じ、気になっていたのだ。
▲別の日に、道の駅南相馬で撮影したマンホール。福島県には、ポケモンのラッキーが、「地域の応援ポケモン」として、あてがわれている。
途中、仮眠をはさみつつ、11時間ほどかけて、遠野市へと到着する。書き忘れていたが、移動には車を使っている。
●遠野博物館
車での旅行の時は、その地方の博物館の駐車場を利用させてもらうことが多い。料金がタダだからだ。もちろん、博物館そのものもしっかり見学する。
▲常設の展示。『遠野物語』の各場面を、再現している
▲展示物の多くは、『遠野物語』が使っていそうな日用品だ。
地方の博物館というのは、力が入っているところと入っていないところに分かれがちだけど、遠野市立博物館は断然、力が入っている部類にあたる。
『遠野物語』は、遠野地方に伝わる民話を活字化して収録したもので、民俗学の先駆けをされている書物だ。その名の由来となった「遠野」という街の気概が、伝わる展示物だ。
まず感想を言えば、「めずらしい」だ。
▲呪符。呪文と、九字の縦横の線と、五芒星が記されている。
かなりの程度文字が読み取れるので、明治時代以降の、わりと新しい護符だ
と思われる。
▲ヤッカガシ。関西で見られる鰯の頭を刺したものと、同様のもの
▲疫病神。この藁人形を「疫病神」ということにして、村の外に追い出す。
▲オシラサマ。二対で一組の養蚕の神様。おそらく、絹糸をまとっている
▲猫絵馬。この地方には猫をまつる神社がいくつかある
展示物は、
呪符、厄除けのシンボル、依り代(厄を払うためのわら人形)、ヒトガタ(「千と千尋の神隠し」にも出てくる人の形をした紙)、丑の刻参りのワラ人形
など、興味深いものしかない。この地に来ないと見れないものばかりで、企画のセンスの良さがうかがえる。
●鍋倉公園
さて、そんな博物館の横に、「鍋倉公園」がある。
「公園」と書いてあるがじつは神社であり、そして城跡でもある。
▲たぶん、復興された本丸(建物に関する説明が見当たらなかった)
鍋倉城は、この地を収めた遠野南部氏の居城で、大きさで言えば青森の弘前城より二回り小さい。
ただ、要塞としてはこちらのほうがずっと攻めにくい。元は戦国時代の築城だそうだが、縄張り(敷地の構成)は中世の山城に似ている。
●とおの物語館
博物館のある区画から、駅の方へ歩いて5分ぐらいのところに、「とおの物語館」がある。柳田国男の像が目印だ。
館内は、『遠野物語』に出てくるお話をモチーフにした小物を展示してある。蔵書もそれなりにあるので、こういうのが好きな人はしばらくは飽きないだろう。
さて、隣の区画にあるポケモンマンホールを撮影したら、遅めの昼食をとることにする。
目を付けていたのは、「ジンギスカンのあんべ」だ。
●ジンギスカンのあんべ
道中、道に迷った。
それというのも、この「ジンギスカンのあんべ」の本店が改装中で、別の場所に仮の店舗をこさえていたからだ。
ただ、道にでかでかと看板が立っていたこともあり、すぐに営業中の店舗に到着することができた。
下調べ不足で、食堂がやっていないことに気づかなかったのだが、みやげものとして「ジンギスカン丼」を買う。
遠野市内には、ジンギスカンを食べさせてくれる店がほかにもあるのだが、この店を選んだのは、やはり「元祖」だからだろう。
この店から、ジンギスカンがこの地方に普及し、さらに七輪のかわりにバケツ! を使う「バケツジンギスカン」を、考案したところでもある。
▲炒めた野菜(キャベツ、もやし)とトウガラシは、自前でのっけている。
後日、いただいた。
クセがないおいしいお肉に、飽きの来ないタレがあわさった、上品な一品であった。
★岩手県北上市
ルート
アメリカンパラダイス → 玉や旅館
北上市は、遠野市の隣にあり、一時期自分が住んでいた町である。
多少は知っている町という事もあり、今回、宿もここでとった。
さて、北上で、個人的に一番思い入れがあるのは、「アメリカンパラダイス」だろう。
でっかい観覧車が目印の商業施設だが、その正体はディズニーグッズからエアーガンまで扱うおもちゃ屋で、一時期ここで、「遊戯王」のカードゲームばかりしていた。
古いアメリカ映画にはだいたい出てくるアレ。今見てもモダンなセンスをしている。残念ながらバーカウンターが撮影の邪魔をしてしまっている。
▲展示物2 エアレーサー
アメリカでさかんな飛行機レースで活躍した機体だと思われる。説明看板がないので、詳細は不明。
▲展示物3 エイリアン&プレデター
ちなみに売り物。
手持無沙汰の休日に、知り合ったデュエリスト(遊戯王カードプレイヤー)と、毎週土曜日に集まって、対戦をしていたのは、いい思い出であった。
また会えるかもと、少し期待していたのだが、残念ながらカードゲームをやるスペースそのものがなくなっていた(上の飛行機置き場になっていた)。
おそらく、感染症対策で、店でのカードゲームが推奨されなくなったのも、理由の一つだろう。時代の変遷を、おもちゃ屋で感じてしまった。
★玉や旅館
地元では有名な赤鳥居(神戸の生田神社の鳥居のように有名)の真下にある。迷いようのない位置にあるが、駐車場がどこにあるかは一度迷った(正解はすぐ隣の一画)。
雨風をしのぐには申し分ない。ただし「自販機」が稼働停止中なので、数百メートル離れたコンビニへ買いに行くことを強いれらる(自転車は貸してもらえる)。
▲フリーズドライのカニ雑炊、缶詰めのブタ大根、ポテチ(カルビー)、龍泉洞サイダー(岩手県岩泉町の特産品)
素泊まりなので、夜食も持参だ。
明日は仙台を通って、霊山へと向かう
★宮城県
ルート
白石城
宮城県は、通過するだけの予定だったのだが、ふと、
「そういえばこの辺に城があったよな」
と信号待ちの交差点でぱっぱと地図を開いたら、なんとすぐ真横、数百メートルの位置にある。
白石城は、仙台藩の城である。仙台藩の城と言えば青葉城(仙台城)だが、この城も地元では有名だ。なぜか徳川幕府の一国一城令の例外とされたのだが、たぶん、奥州街道(現在の国道4号線)の隣という交通の要衝にあったからだろう。
江戸時代の城は、要塞というより、行政のための施設だった。
この本丸は平成のころに復元されたものだけど、雰囲気は出ている。事実上、青葉城の「出城」だけど、中小の藩の本城よりずっとでかい。
なお、こんなところにもポケモンマンホールがある。近くにポケモンのラプラスが描かれた自動販売機があって、もしやと思って調べたら、目と鼻の先にあった。
★福島県
ルート
霊山
趣味の一つに山登りがあるのだが、去年は入院したこともあって、1年ほど行けていなかった。
「リハビリを兼ねて、手ごろな山はないかな?」
と探していたところ見つけたのが、この霊山(りょうぜん)だった。
標高は825メートル。実際、登山口は400メートルぐらいの地点にあるため、標高差は500メートルを切る。
紅葉の名所であり、登山道が整備されている。南北朝時代の城跡があり、知的好奇心もくすぐられる。以上が、この山に決めた理由だ。
驚いたのだが、登山口のところに普通にポケモンマンハールがあった。まったく、ノーマークだった。
登山口には、登山者の緊急連絡用に、名前、住所、電話番号を記入する場所があるのだが、その足元に普通にゴリラとラッキーがいた。
どうも今回は図らずも、ポケモンマンホールを巡る旅になってしまっているらしい。
さて、登山道は、事前情報通り、整備されている。
▲名所1 鍛冶小屋岩
▲名所2 見下ろし岩からの風景
▲名所3 天狗の相撲場
期待した南北朝時代の遺物は、ほぼ残っていない。
▲国司館(役所)の跡。看板が立っているだけ
▲霊山寺跡。
なんとなく、「こういう構造をしていたのだろうな」と思わせては来るけど、「兵どもが夢の跡」的な感慨以上のものは、わきにくい。
▲頂上
ただ、山自体はおもしろいコースをしており、お手軽に登山を楽しむ、という点では良い。
夏場でもさほどしんどくなく、ほどよくお腹を減らせる。
昼食のクリームシチュー、めちゃくちゃうまかった。
★栃木県
ルート
那須どうぶつ王国
だいぶ前のこと。
自分は「神戸どうぶつ王国」でアルバイトをしていた。
「神戸どうぶつ王国」の本体が「那須どうぶつ王国」であり、一度行ってみたいと、常々思っていた。
東北自動車道を白河ICで降り、車をさらに走らせること20分。
時刻はすでに16時半。17時で閉園なのは知っている、神戸もそうであった。
「テーマパークに来たみたいだぜ!!」
いや、おちょくっているのではなく、本当に「いい」と思ったのだ。
神戸どうぶつ王国は、その前身を「神戸花鳥園」といい、その名の通り花と鳥を主な展示物にすえた、静かな施設だった。鳥のいる植物園と言ったら、わかりやすいだろうか。
だが、この那須どうぶつ王国は、本当にテーマパークのようだった。一言で言うなら、「王国」みたいだった。
動物の種類は豊富であり、しかも間近で見られる。
動物たちは、おそらくうまく餌付けされていることもあって、人懐っこい。ガラス越しであっても、近くに寄ってくる。
サーバルやニホンカモシカが、すぐ間近で見れたのはよかった。
かつて自分が関係していたところが、健在だったり、栄えていたりすると、人はうれしいものだ。
こうして、それなりの疲れと、確かな満足感を得て、1泊3日の旅を終えた。
今は、ジンギスカン丼と獺祭(だっさい:ブログ主が特別な時にしか飲まない日本酒)で晩酌をしつつ、この記事を書いている。
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