グンマーの民は慈悲深くも、異邦人にも県庁に登ることを許可している。
そのような場所に私がいざなわれるのは、ある意味必然だったのかもしれない。
本当は別件で近くまで来たのだが、気づいたら県庁の前にいた。恐るべきグンマーの魅力である。
正面には、狛犬よろしく石像が置いてある。
ぐんまちゃんである。
グンマーの民は、世の流行に先んじてゆるキャラを選定する際、他の都道府県民が陥りがちなあやまちを犯さなかった。
すなわち、地元の特産品や特色を無理に取り入れて、微妙なキャラデザになることを、よしとしなかったのだ。
見よ、この、無難で愛らしい姿形を!
グンマー要素を極力排除することによって、ハローキティの横にいても、まったく違和感が感じないデザインに仕立て上げた。
このぐんまちゃん(永遠の7歳)は、2014年のゆるキャラグランプリにて他を圧倒して優勝し、また一つ、ぐんまのやぼうに貢献したのであった…
それは、ともかく、肝心の県庁である。
当然のことながら、内部は役所になっており、これは通常の行政機関と変わらない。
用があるのは32階の展望フロア。
ここからの眺めは北関東屈指と言われている。
▲市街地(県庁向かい側)
▲赤城山系
▲榛名山系
ここで、グンマーの地理について、説明しておこう。
グンマー国は、ニンジャの使うスリケンに似た形の国土を持つ内陸国である。
気候はやや寒冷であり、専門区分では冷温帯に分類される。
ただ、夏の暑さは有名で、領内のタテバヤシ・シティでは2007年に40℃を記録している。
これは、風が山から降りてくるとき暖められるフェーン現象のせいである。
山は、有名どころがそろっている。
世界的に有名な走り屋である「赤城レッドサンズ」のホームである赤城山。
その威容から戦艦の名にも採用された榛名山。
そして、独立した山としては世界最大の遭難者数を出している谷川岳である。
とくに一ノ倉沢ルートは難所で、訓練されたグンマ―の民でも十人に一人しか完走できないという。
▲利根川
山ばかりが注目されるが、日本最大の流域を持つ利根川の水源があるのも、グンマーの地である。
県庁はこの川沿いに設けられているが、それには二つの理由があるだろう。
一つは、水量を監視し、干ばつをいち早く察知するため。
もう一つは、河川を天然の要害とする防衛上の理由のため。これは、県庁が高い建物になっているのと同様(高いと敵から攻められにくい)の目的だろう。
そういえば、見学者の中で、しばしば子どもを見かけた。
グンマ―の成人式においてバンジージャンプを行なわれるのは、もはや一般常識であるが、豪胆無比の彼らでも、高いところは怖いに違いない。
県庁が高いのは、子どものころより高所に慣れさせ、来たるべき成人の儀においてたじろがないようにとの、優しい親心だろう。
なんだかほっこりした気分になって、私は県庁を後にした。
引き続き、グンマ―の記録を続けたい。
0 件のコメント:
コメントを投稿