ポケモンGOーー無数の御三家

　前回、ピカチュウを捕まえ損ねた私。
　ネズミへの思いを抱えたまま、茨城県のひたちなか市へとやって来ていた。
　先週に引き続き、音楽イベントのスタッフとして勤務するためだ。

　ひたちなか市は快晴で、陽射しは厳しいものの海風が冷たい。程よい田舎のため高い建物がなく、空が広い。
　少し離れたところには、軽巡洋艦那珂（なか）の名の由来になった那珂川が流れている。

　安定と安心の17時間勤務の中、私は休憩時間を利用して近所のマクドナルドに来ていた。いわゆる戦士の休憩ってやつだ。

　そしてポケモンGOを起動する。
　トレーナーレベル7。ため息をつく。

　気ままに進めるつもりだったが、残念ながら副業のライター業のポケモンGO関係の仕事で、｢レベル15以上｣とか｢レベル20以上｣とか指定する案件が増えてきた。
　先は長い。

｢やれやれだぜ｣

　震える携帯。ポケモン出現の合図。
　最近、｢ポッポマラソン｣なるトレーナーレベル上げの近道を知って、ポッポを乱獲しているため、モンスターボールが不足気味だ。もうきままに、モンスターをゲットする使い方はできない。吟味が必要だ。

｢さよなら青き日々よ、ってやつだな｣

　私は携帯を見た。
　青いヤツがいた。

　　　

！！　ゼニガメ、ゼニガメじゃないか！　御三家のキミがなぜ野生に？

　いや、カビゴンだってイーブイだって、みんな野生なんだゲットできるんだ。ゼニガメだって･･･

　ワクワクを押さえつつボールを投げる。一回振り払われたものの、無事ゲットする。

　初代をやった人間なら、誰しも御三家を進化させた個体、すなわちフシギバナ、リザードン、カメックスでパーティを組むことを夢見る。

　さすが任天堂。俺たちの夢を叶えてやろうって腹積もりか。そこにシビレルあこがれるぅ！！

　しかし次に出てきたポケモンで、ショックを受けざるを得なかった。

　　　

　フシギダネ･･･　だと･･･？

　思うところはあるものの、レアポケモンには違いない。無事ゲットする。
　ステータスを見て、更なる衝撃を受ける。

　※　※　※

　初代において、最初にもらえる｢御三家｣は、他では友達によほどせがんで交換してもらう以外は手に入らず、特別なポケモンであった。
　だから格別愛着が沸くし、たいていの人はのちの四天王、そしてライバルとの最終決戦まで彼を連れていく。

　私が初めてもらったポケモンはフシギダネで、ポケモンGOでほぼ20年ぶりにポケモンに出戻った時に選んだのもフシギダネだった。愛は劣化するが、愛着は時を越える。

　彼は自分にとってオンリーワンであった。

　今回、2体目のフシギダネが手に入ったというだけでもカルチャーショックなのだが、更にそのフシギダネがどう見積もってもステータス的に優位なのが追い撃ちとなった。

　育てるなら、彼を選ばざるを得ないし、いや、彼でも不十分だ。私のトレーナーレベルが上がれば、もっと優れたフシギダネが手に入るだろう。トレーナーレベルと出現ポケモンのレベルが比例することは、すでにポッポの乱獲で気づいている。

　そして、もう一つ気づいてしまった。
　純粋にレベルあげを優先するのなら、一番初めのフシギダネを博士に送って、レベルあげに必要なアメ玉と交換しなければならないことに･･･

　ゲーム性の違いと言えばそれまでだろう。あるいは一品ものは｢量産｣される宿命にあるのかもしれない。だからそれはいい。

　しかし、トレーナー同士のポケモン交換が実装されることがほぼ確実なのだから、｢彼の物語（セーブデータ）｣では決して手に入らないポケモンをもうけて、かつて体験した交換する楽しみを再来させても、よかったと思う。

　まあ、ポケモン青でのケンタウロスみたいな商法だと、ちょっと困るが。