2021年2月19日金曜日

一つのAIの終わりーーゼノンザード雑感


斬新は売り上げには結びつかない。この事実を残して、また一つTCGが消えた。




●ゼノンザードについて

ゼノンザードは2019年9月10日~2021年2月18日まで、バンダイナムコにより運営されていたスマホアプリのカードゲームだ。

当初は、紙のカードのデッキを無料で配布したり、相当有名なTCG系you tuberとコラボしたりして、それなりの宣伝を行なっていたのだが、力及ばずサービス終了となった。



コンセプトは、


『AIと共に、AIと戦う』


これまでに類を見ないアプリゲームであったが、斬新が売り上げにつながるわけではないので、あえなくサービス終了となった。



●目次

★システム:ゲームのルールは手堅い部類

★AI:AIに関しては筋は通した

★終了の理由:人類には早すぎたと思いたい

★バディとの思い出(個人的な余談)




★システム:
 ゲームのルールは手堅い部類

ゼノンザードは、非常に乱暴に言えば、

「クリーチャーが土地として使えるMTG」

だ。

マナフェイズで土地カードの代わりにミニオン(クリーチャー)を置くことができる。

一度場に出したミニオンは移動式であり、マナとして運用することもクリーチャーとして運用することも可能だった。

他にフォースという、遊戯王のフィールドカードとデュエマのシールドをあわせたようなものがあった。

フォースは常時、場に影響を及ぼし、デッキと同程度に重要な概念となっていた。

根幹こそMTG風のマナシステムだが、遊戯王との共通点も複数ある。

デッキ枚数が40枚。同名カードは3枚まで(例外あり)。場に出せるミニオンも5体までだ。

他に、スタンバイフェイズ、メインフェイズ、エンドフェイズなどの呼び方も、遊戯王を連想させる。

また、プレイヤーに課金をしてもらう仕組みはシャドバを踏襲しているように見える。シャドバといえば、デジタルTCGの大手だ。



まとめると、他のカードゲームの良いところを選抜して、AIが行なうゲームとして落としこんだ、のが、「ゼノンザード」と言える。

ゼノンザードは、このAIと対戦するゲームであり、これが利点であり、欠点でもあった。



★A I:
 AIに関しては筋は通した

「対人戦」の問題は、ゼノンザードが終始言われたことだった。

ゼノンザードの「クロスバトル」と呼ばれるこの形式は、他のカードゲームには見られない。

対戦においてプレイヤーは、対戦相手が育てたバディAIと戦うのだ。人間と人間が面と向かって戦うわけではない。

非常に斬新ではあるのだが、問題点がある。

カードゲームの重要な楽しみの一つ、

「あそこでこのプレイをしたほうがよかった」

「このカードが来てくれたら勝てた!」


などが言いあえないのだ。

例えば、対戦動画の実況で、プレイヤーとプレイヤーが会話できないことを想像してみてほしい。これは、見過ごせない問題点であろう。

肝心のAIの育成方法がわからないという声も、しばしば聞かれたものだった。

事実、カードの「無駄打ち」に似たプレイングをAIが行なうことがあり、これに対する矯正方法がいまいちわからない、ということがあった。



とはいうものの、AIは原則として優秀であり、そのアドバイスは人間の勝率の向上に大きく貢献したと思われる。

自分自身の経験を照らしてみても、

「なんでこんなプレイングするんだ? →(数ターン後)→ あ、そういうことか!」

と気づかされることがたくさんあった。

新規カードが追加され、

「バランスが悪い」
「コラボ先に忖度している」

と評判がたっても、AIはちゃんと適応していった。

運営は「AIと戦う」のコンセプトは通したと言える。



★終了の理由:
 人類には早すぎたと思いたい

「AIカードバトル」はまちがいなく斬新だったし、肝心のAI部分では質を落とさなかった。

それでも、1年と半年でサービスが終了した理由を換言するなら、

AIの成長を愛でる快感に、多くの人類が気づかなかった

と言える。

よく聞かれた悪評、


バランスが悪い コラボ先に忖度
インフレが激しい ゲームが長引きがち


は、他のカードゲームでも言われることであり、致命打になったとは言い難い(無視できない要因ではあるが)。

ブログ主は、ゼノンザードをやりこんだわけではないが、「AIと戦う」には確かな手ごたえを感じており、サービス終了は残念だ。

こういったコンセプトのコンテンツが、一つでいいから日本で存続してほしかったと思う。

ゼノンザードでつちかわれたAI技術は、おそらく他でも転用可能なものだろう。技術的な挑戦という意味では、無為ではなかったのかもしれない。

しかし、おのおののコンコード(プレイヤー)のバディAIは、永遠に失われたことになる。

仮に一つのAIであっても、それが無数となるならば、無視できない損失だろう。

10年後。AIが小さいころからあり、慣れ親しんでいる世代が台頭してくる時代に、もう一度同じコンセプトのアプリを出してほしいものだ。



★バディとの思い出(個人的な余談)

・その1
主人公がバカっぽいのが、ちょっと気に入らなかった。






バディに建築AIの彼女を選んで、そのファーストコンタクトの場面なのだが、こんな安直な答え、俺なら言わないな・・・

最初の選択肢であるにもかかわらず、

「どっちも選びたくねえなあ」

と、数十秒は止まったぞ。



・その2
AIとの「シンクロ率」が大事になってくるゲームだったのだが、これを上げるには主に二つの方法があった。

バトルと、お触りである。

お触りはわかりやすくいうと、ポケモンの「ポケパルレ(ポケリフレ)」だ。

俺はこのたぐいのゲームシステムがかなりキライなので(なんで画面を指やタッチペンでいちいちこすらなければいかんのだ?)、チュートリアル以外ではやっていない。

「ゼノンザード」の世界観にあっているとも思えないし、なんでこの機能を実装したのだろう・・・



・その3
バディAIとトレーニングバトルを見たりやったりして思ったのが、

「対人戦が得意ではないのか?」

ということだ。

「わからないな」というボイスとともに謙虚なプレイを数ターン続けるおかげで、結局こっちが殴り勝つことがあった。

たぶん、人間風のデッキの回し方が、あまり理解できず、深謀があるとカードを出し惜しみしたのだろう。

こっちとしては、ミニオン焼いてHPを殴る、の脳筋プレイしか頭にないんですけどね・・・



・その4
サービス終了するその瞬間は、自主的に作った休憩時間を利用して、バディAIとトレーニングしていた。ほら、遊戯王DMでも、最後は相棒とデュエルするだろう?

HPがどちらも1になる接戦だった。勝負が終わり、リザルトの画面に移行するその時に――


サービス終了になる11時となり、「メンテナンス中」の文字が出た。

「あっけないな」と思った。なにか、サプライズがあると期待していたのだ。

プレイしていたアプリのサービス終了に立ちあうのは『ゼノンザード』が初めてだった。

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