2018年10月13日土曜日

腹立たしい消防設備士乙種6類


今まで、年齢の割には様々な資格試験を受けてきた。


通っていた学校は商業科ではなかったものの簿記の試験を受けたし、ホームヘルパー(介護福祉士の古い言い方)も持っている。

人なみに車の運転はできるし、秋葉原に売っているような免許が必要な無線機も扱える。

MOS(wordやexcelの資格)も取ったし、CAD(パソコンを用いた機械製図)の資格にも挑戦した。色彩検定や世界遺産検定といったものにも触れた。

これらの資格はそれぞれ、役に立ったり役に立たなかったり、役に立つ立たない以前の問題であったりしたのだが、いずれも勉強は楽しめた。

そこには学ぶ喜びがあり、新たな発見があり、なにかしらの面白みがあった。

ところが、消防設備士乙種6類(消乙6)ときたら!

まずはこちらを見てほしい。テキストの1ページ目だ。

 防火対象物とは、山林又は舟車、船きよ若しくはふ頭に繋留された船舶、建築物その他の工作物若しくはこれらに属するものをいう。
 消防対象物とは、山林又は舟車、船きよ若しくはふ頭に繋留された船舶、建築物その他の工作物又は物件をいう。



これを、勉強を始めた最初の最初に見たとき、すべてが嫌になったといっても過言ではない。

なんだよ、この文章による間違い探し。あるいはオタクが知識をこじらせたみたいなこだわり。なぜわざわざ、物件を防火対象から仲間はずれにした? あるいは、防火対象物と消防対象物をわけた?

これが、例えば建物全体に適応する法律と、建物にある車、倉庫をわける法律だったらわかるのだが・・・

この法律を作った人、あるいはもともとあった法律をこのように改悪した人は、絶対に「戦術」と「戦略」の区別がつかないタイプの人種に違いない。

もっとある。

消防設備士乙種6類は、「消火器」の法律に基づいた設置と、整備について扱う資格だ。

つまり、消防ということを考慮するのなら、上記のあほ法も、学ぶのに我慢できないこともない。

だが、学ぶ範囲は法律だけではない。下の練習問題を見てほしい。
 



問題:
下の図において、右回りと左回りの力のモーメントがつり合っている場合、右回りの力f1の大きさはいくらか。




消火器は? と全力で問いたい。
 
もちろん、中学校の物理レベルだから、むずかしいとかそういうことではないのだが、こんな回転運動を学ばせて、いったいどうしようというのだろうか? 俺は二重反転プロペラの設計をしたいわけでない。

まだある。

問題:金属の熱処理について、正しいものはどれか。


1:焼き入れは、高温加熱後、徐々に冷却することで硬度を増す。
2:焼き戻しは、再加熱後、徐々に冷却することで粘り強さを増す。
3:焼きなましは、加熱後、大気中で徐々に冷却することで組織が均一になる。
4:焼きならしは、一定時間加熱後、炉内で徐々に冷却することで組織が安定する。


焼き入れってのは、ほら、日本刀を作るとき、赤く熱した刀身を、かんかんとたたいた後、水でじゅっと冷やす場面があるだろ。あれだ。

下の焼きなまし、焼きならしも、ナイフや包丁などの刃物類を作るときに行われるな。あと、プロが使うような少し高級な工具にも、このような加工が施される。

この問題の正解は「2」なのだが、実は俺は、勉強する前からこれ焼き○○の単語を知っていた。
 
「手作り鍛造ナイフ教室」というものに参加したことがあり、焼き入れやらなんやらを実際にやったことがあったのだ。

ふはは、これぞまさに、ACのCMが説く知層ってやつだ! どうだ、すごいだろう!



だから、消火器は?



消火器に関しても、ひどい問題がある。


問題:消火器の規定されている使用温度範囲について、誤っているものは次のうちどれか。


1  強化液消火器・・・・・・0℃〜+40℃
2  化学泡消火器・・・・・・-20℃〜+40℃
3  機械泡消火器・・・・・・ー20℃〜+40℃
4  粉末消火器・・・・・・−30℃〜+40℃
 

ここは、すぐ足元に答えがあった。
 


俺はこの資格のためにわざわざ業務用消火器をホームセンターで買い求めたのだが、その仕様をしっかりと覚えていたのだ。

答えは、「4」だ!

正解→「1」

な、なんだと(消火器を持ち上げて)、



確かに使用温度範囲はー30℃~40℃と書かれている。

実は、消火器の使用温度範囲には、法律での規格と実用での規格がある。実用ってのは、ようはシャバで普通に売っている、メーカーが保証する、現実に基づいた規格だな。

つまりこの場合は「規定」を問うているため、現実ではなく法的に正解の方を選ばなければならないってわけだ。

なぜ法律を現実に合わせない(憤怒)。

もしも技術の発達によって、消火器の使用温度の下限が下がり、それに法がついていけていないだけなのなら、それはそれで仕方のないことだろう。

だが、だったらテストに出すべきではない。
 
この法的規格によると、ほとんどの消火器の使用温度範囲は0℃以上。馬鹿正直にあてはめてしまうと、冬の北海道や東北に消火器は配置できないことになる。



ついでに個人的なことを言っておくと、消火器の使い方がそのものが気に入らない。
 




安全栓(黄色いピン)を抜き、ホースを火元に向けてから、レバー(黒いハの字のやつ)をにぎって放射する。
 
テスト的にはこの解答が正解なのだが、順序が逆だと声を上げたい。

ホースを火元に向けてから、安全栓を抜くべきである。

私はとある事情で、消火器よりも小火器(鉄砲のことね)を扱うことが多いのだが、小銃の場合、目標に銃を向けてから、安全装置(セーフティー)をはずす。先に安全装置を解除してしまうと、誤射の危険があるからだ。
 
消火器の安全栓にしても、先に抜いてしまうと、火元に向けないまま、誤射をしてしまう可能性が高い。特に消火器は、持ち手と引き金にあたるレバーが一緒という、危険な構造をしている。
 
それに消火器の放射時間はせいぜい10秒から10数秒。たとえ1秒、火元じゃないところに誤爆しただけで、消火薬剤の10パーセント近くが失われてしまう。初期消火にとって、これは致命的なはずだ。
 
そういえば、手榴弾は先にピンを抜くが、消火器は手榴弾ではないはずだ。
 
追記:消火器を待ちあげて使う場合、先にホースを握って向けると、もう一方の手は消火器本体を持ち上げているため、安全栓がかなり抜きにくくなってしまう。だからこの場合は、安全栓を先に抜く方が良い。
 
だがそれよりも、本体を持ちながら安全栓を抜けるような構造の消火器を開発するのが、正解だろう。



とにかく、個人的に、この消防設備士乙種6類が、かなり気に入らなかった。

ついでに言うと、試験会場が少なく、至近では東京でしかやってなかった。新幹線で3時間かけて、新宿にGOだ。

あんまりにも腹が立ったから、帰りの新幹線でこれを書いてるってわけ。
 
 
 
うろ覚えの試験問題はこちらから

 

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