さて、ゆえあってグンマー国に入国した私。
一度入ったら帰ってきたものはおらず、入ろうとすれば弓で射られる。電化製品は一切使用できず、木の上に家が立っている。
ネットでそのようにささやかれる名高き秘境を、実際に見聞する機会を得たわけだ。
降り立ったのは、タカサキ・シティである。グンマー国第一の都市であり、この辺りではもっとも栄えている地域だ。
今年の冬は、ここですごす予定だ。
一見、普通の都市を装っているが、おそらくこれは、千葉や埼玉や東京といった周辺の田舎から来た者をびっくりさせないための配慮だろう。
事実、駅前からすでにおかしな兆候があった。
集結しているバスには変な鳥が描かれているし、どこからか流れるブラスバンドはずいぶん古い曲だ。
そして、横断歩道で整然と待機するスーツ姿の男たちはみな、緑色に赤いマークのついた自転車に乗っている。
▲舗装されていない地域では、今でも自転車は有効な移動手段だ
統一された装備と、その精悍な様子から私は、彼らはグンマー国の精鋭部隊に違いないと見当づけた。
とにかく、街の様子を見て回らねばならない。
知的好奇心と義務感にとらわれて、あたりを巡ることにする。
グンマ―の民は、外来のものを取り入れるのにも熱心なようだ。
おそらく、オオサカ国を訪れたグンマ―人が、その味に感動して、店を開いたのだろう。
あるいは、移住者を受け入れたのかもしれない。
移住者ではない在留邦人の私は、あてがわれた借家のカギを受け取りに行かなければならない。
目的地に向かいつつ、探索を続ける。
これは・・・ 銀座?
銀座と言えば、おしゃれでハイソで海外にも知られた東京の地名だ。なぜこんなところに・・・?
私は直感する。
おそらく、「ぎんざ」は、ここグンマーが発祥の地なのだろう。なぜなら「中央」と書いており、ここが全国の商店街にある「銀座」の中心であると主張しているからだ。
わざわざ「ぎんざ」とひらがなで書いてあるあたり、子どもでも読みやすいようにしている点も、好感が持てる。
買い物をしたくなったが、あいにく手持ちがない。
なので銀行を探すことにする。
なので道中でメロンパンを買い、腹の足しにする。うまかった。
メロンパン以外にも、グンマー国には興味深いものが目についた。適宜紹介していく。
▲謎の地下通路
タカサキシティでは、「キングオブパスタ」という催し物が開かれている。パスタの王を決めるための戦いだ。
これは、質実剛健だが内陸国ゆえ外の情報が入りにくいグンマーの民に、海外の優れた食文化を普及させるのが狙いだろう。
そしてタカサキキャッスルである。おそらく大手門――正門に当たる施設だ。良好な保存状態から見て、現役の施設だろう。
日々サイタマやトチィギの民と抗争に明け暮れるグンマ―の軍事力は、私にとって最大の関心ごとだ。
本丸を確認しようと、内部に入る。道に迷った無害な観光客のふりをして、前に進んだ。
何も見当たらなかった。
いくらさがしても、石畳の広場のようなものしか広がっていない。
▲わざわざ旧字である「聯隊」を使っているあたり、グンマーの民の知的水準の高さがうかがわれる
「歩兵第十五聯隊(連隊)」と表示してあるので、まとまった数の人間がいるのはまちがいない。
なぜだ。
どうしてだ。
連隊の構成人数、2500人の人間は、いったいどこへ消えたのだ!?
ここで私は、ふと思い至った。
それはあまりにも荒唐無稽で、信じられないと、自分で自分を疑った。
しかし、結論はこれしかない。すなわち――
超時空的措置によって隠されているのである!
皆様はお忘れだろうか?
群馬県は、劇場版クレヨンしんちゃんの「ヘンダーランド」が、隠されていた土地であることを…
▲蔦の生えまくった建物。植物との一体化によって、耐震性が向上しているに違いない。
▲かなり大きな提灯。用途は不明。
▲タカサキシティを循環するバス。変な前衛的な鳥のイラストが描かれている。
私はあらゆる驚愕を抱いたまま、不動産屋でカギを受け取った。借り家は辺鄙な場所にあり、ここから乗り物で移動しなければたどり着けない。
私の記憶が正しければかなり古い歌のはずだが、グンマ―では古きよきものを残す習慣があるに違いない。
とにかく今年いっぱいは、グンマ―から目を離せない私であった。
0 件のコメント:
コメントを投稿