2017年10月9日月曜日

ヒーターを求めて600キロ 後編





三行で書く前回までのあらすじ


俺寒いの嫌
ヒーター取ってくる
車で600キロ走って


ヒーターを求めて600キロ 後編





今回、自宅から回収するものはこれらだ。
 
 
  • 灯油式ヒーター
  • 灯油
  • 冬用の服
  • ヴァイスシュバルツのデッキ
  • ナイフ用とぎ石
  • USBメモリー
  • 髭剃りの替え刃
 
 

●灯油式ヒーター・灯油

今回のメイン。灯油という文字が単体であるのが、お分かりいただけるだろうか? 今回、ヒーターといっしょにこいつも持っていきたかったのだ。
 
 もし家に去年の灯油がなく、ヒーターしかなかったら、私は車で600キロ走ろうとは思わなかっただろう。家にある灯油はおよそ10リットル、使わない手はない。




 よし、そっこーで車にのっけたぞ。
 

●冬用の服

メインその2。宮古の借り家には、冬用の服がまったくないのだ。
 
メイドインミャンマーのコート 俺のお気に

 なにも私は、9900円のヒーターだけで車を走らせる男ではないわけだ。
 
 

 
●期限切れ間近の食料


 

保存食のうち、期限切れ間近のものがあると記憶していたので、これも持っていく。
 


いけね、だいぶ過ぎてしまっている。てへぺろ。
 


●ヴァイスシュヴァルツのデッキ

本来、テーブルゲームを紹介するこのブログであったが、宮古市には相手がいないので、絶無であった。
 
 車で20分ほど走らせたおもちゃ屋に、月一でヴァイスシュヴァルツの大会があるとの情報をつかんだため、今度参加してくる。
 
 

●ナイフ用砥石(といし)

これまで宮古の家では、適当な刃物がないので、食材を肥後守で切っていた。いよいよちゃんとした刃物を導入しようと決意し、「どうせなら自作しよう」と思い立ったため、その制作道具として持っていくことにした。ちなみに、中砥石と仕上げ砥石を持っている。
 
 ・・・あれ、クローゼットの段ボールの、どこにしまったんだっけ? 見つからんし、探すのが面倒だ。あきらめるか・・・
 
 
 

●USBメモリー

パソコンの記憶媒体を持って行っていなかったので、一つ持っていくことにした。8ギガの、ソニーの純正品で、知り合いに「お年玉」としてもらったものだ。
 

 
 このポチ袋の中に入っている。
 
 
 

●髭剃りの替え刃

私は髭剃りは絶対に4枚刃じゃないとダメな人間だ。なぜなら3枚以下だと、ちゃんと剃れずつい力をこめて肌がカミソリ負けし、流血の大惨事になるからだ。
 
 
 
 
 さて、これらの荷物を積んだら、とくに用はなくなる。さっそく出発おしんこーしなければならない。
 
 ここで正直な話。
 
 ・・・戻りたくねえ
 
 正確に言えば戻りたくないんじゃなくて、600キロ運転したくない。いくらなんでもしんどすぎる。本当はもう一回惰眠をむさぼりたい! 
 
 もうゴールしてもいいよね・・・
 
 しかし、そうすると火曜日の出勤日に間に合わなくなる可能性がある。もちろん、高速道路という名の甘美なロードを進み、時間を60パーセントほど短縮(18時間→8時間)する誘惑もある。だが、俺の栄光のロードはそんなものではなかったはずだ。
 
 そう、決意したはずなのだ。
 
 あの東北の、雨ざらしの駐車場で、「ボクは高速道路は通らない。遅くたっていい。下道を地道に進むんだ!」と。
 
 キーを回す。エンジンがかかる。レバーの位置を「D」にし、サイドブレーキ解除。ライトをつける。ほのかに灯油のにおいが漂ってくる。
 
 カーナビを操作する。
 
「目的地まで、およそ、591キロです。18時間30分ぐらいかかります」

 コンビニで買った眠気覚ましドリンクを一気にあおった。
 
 全機、フルブラスト!!
 
 誰にも俺を止めることはできん!

※ ※ ※

ここで、俺の超絶ドライビングテクニックについて説明しておこうか。人々を感動させた、数々の逸話たちだ。


  • 仮免練習中、知り合いの車を借りて運転。その超絶技術に感心した知り合いは「運転させるには恐れ多い」と、道半ばにもかかわらず自ら交代することを買って出た。
  • 卒業試験中、おおらかなで細かいことを気にしない性格の俺は最初の一時停止線を無視し、教官を慨嘆させる。
  • 免許取得から二年後、ペーパードライバー講習のとき、教官から「バック駐車はうまい」とほめられる。
  • 仕事で車通勤をすることになったとき、その運転テクを見た同僚から「私が送り迎えしましょうか?」と志願してもらえる。
 
 さて、利根川をこえ、茨城県に入る。夜9時半から出発したにもかかわらず、土浦市付近で渋滞につかまる。
 
 なんか、牛久市とか土浦市近辺って、渋滞しやすい地域みたいだな。
 
 それでも、とくに可もなく不可もなく、3時間ほど走る。日付が変わるころ、どうしても眠かったから、コンビニの駐車場を借りて仮眠をとった。だめじゃん! 眠気覚ましドリンク!
 
 
 
 ミニストップの光は、我々に暖かな光を浴びせてくれる。まぶしくてちょっと眠りにくいぜ。
 
 しかし、3時間走って、まだ茨城県内なんだよな・・・
 
 
 
 4時間後、案の定寒くて目を覚ます。寒さには強いほうなのだが、眠ると急激に体温が下がる体質なのだ。
 
 幸い、車がほとんどいないので、順調に飛ばす。明け方の、太陽が出る直前のこの時間帯、結構好き。
 
 
 
 
 みなさん。福島県の朝ですよ。
 
 
 
 で、もう一度ここを通るわけだ。
 
この先帰宅困難区域って、電光掲示板に書いてある。




 まっすぐ道が伸びて、走りやすい道路だ。信号はそのほとんどが、黄色でちっかんちっかん点滅しており、少し斜めから見ると、ずっと地平線の先まで、3つ4つの信号がちかちか点っている。
 
 放射能測定値が表示された電光掲示板があって、その下をあらゆる種類のパトカーが通る。普通乗用車や、バンタイプや、四輪駆動するヤツ。覆面パトカーですら、一度見かけた。







 それにしても、お日様の光の元で見てみると、普通の町なんだよな。今じゃ、ちょっと地図を確認しようと停車すると、どこからかマスクをつけた警備員が「停まるな」とくる地域だ。
 
 
 
 ところで、さっきから気になることがある。
 
 なんか・・・ におうんだよ・・・
 
 灯油のにおいがひどいのだ。
 
 ヒーターを積んでいるのだから当然、ある程度におうのは仕方がない。しかし、これはちょっとひどい。窓を閉めていられないぐらいだ。
 
 そう思って、後部座席に積んであるヒーターを見たんだ。
 


 濡れ・・・ てる・・・ だと・・・?

 
 貴様! 俺の許可なく濡れやがったな! このびっちめ!

 
 それともあれか? 俺が茨城県の自動車道を時速1●0キロぐらいで飛ばしたで、ガタガタ震えたのか!? そんなにしまりのないやつだったのか? そんなことで、真冬に俺の身体を温めることができるのか!?
 
 怒り覚めやらぬまま、「道のえき南相馬」で、いったん車を止めた。
 
 失望していた。そりゃ、中の灯油を完全に抜き取っていなかった俺にも責任はある。だがしかし、俺が手荒なことをする男だと、あいつも知っていたはずだ。
 
 あまりにも液漏れが収まらないようなら、最悪この道のえきにそっと置いていくこともありうる。
 
 そんな非常な決断も視野に入れつつ――
 
 ダンボールをあけた。ひどいにおいがした。

 そこにはつつましく収まっているヒーターがあった。約一年ぶりの再会だ。
 
 ふたをあけ、タンクを取り出す。
 
 ・・・あれ、重いな。たぷたぷと音もする。これ、中がつまっているぞ! しかも、下の口がゆるんでいる。
 
こんなの、こんなの、だだ漏れするに決まっているじゃないか!
 
 うかつだった。年に一度のお手入れを忘れたあげく、下がゆるゆるになっているのに気づいてやれないなんて! 
 
「ごめんよ、俺が悪かった。これからもずっといっしょだ!」
 
 ひっしと、抱きつくマネをした。あくまでマネだけだ。服に灯油のにおいをつけたくない。
 
 ヒーターは、なまめかしいテカりを帯びて、朝の空の下でたたずんでいた・・・


目的地まで あと325キロ


 ※ ※ ※


 南相馬から仙台までは、ほぼ直線であることもあってわりとすぐだ。自分は2時間ちょうどで仙台に進入した。
 
 この日はチベット高気圧のおかげで、全国的に暑い日だった。仙台でも20度を超え、しかも渋滞が発生していて、俺の心身が小雨でじょじょにしわしわになる段ボールのようにぐずぐずになり始めていた。運転を始めて、もう13時間が経過している。
 
 ただ、仙台自体は、それなりに暮らしやすい街だと思う。自分は今まで東京、名古屋、大阪、神戸、仙台で生活したことがあるが、総合得点では仙台が1、2位を争う。家賃が安く、閑静なわりに、ちゃんと都会として十分な機能をしている。
 
 ちなみに俺的指標では、その街が都会かそうでないかは、街の中にメロンブック、とらのあな、アニメイトがあるか否かで決まると思う。異論は認めるが、大体の人にご納得いただけるのではないだろうか? もっとも俺はごくまれにメロンブックを出入りする以外は、ほぼ利用しないのだが。
 
 仙台は東北の中心都市なだけあって、道路がいくつか通っている。今から通る三陸自動車道も、その一つだ。
 
 三陸自動車道は、仙台市から宮古市に至る、俺にとっては素敵な道路だ。ただし現在は130キロ手前の気仙沼までしかちゃんと開通していないうえ、完全開通するころには俺は宮古市にいそうにない。
 
 それにしてもこんなふうに、仙台やら宮古やら南相馬やらつらつら説明されても、とくに関東以西に住んでいる人にはなじみがないだろう。
 
 
 だから、今回の道程を艦娘で説明したいと思う。
 
 
 千葉県から出発し、利根川を渡って、茨城県へ。そこを北上して那珂ちゃん川を渡り、福島。福島にはこれといった艦娘はいない。宮城県では阿武隈川、名取川を連続してわたり、仙台へ。東へ伸びる三陸自動車道を通って、北上様川を通過する。そこから先は、昔の「陸奥国」の、奥地だ。
 
 
 
 気仙沼に降り立ったのは、夕方の4時だった。海岸地帯なので、さえぎるものがなく、日の入りは内陸部よりちょっとだけ遅い。工事中の復興道路の高架下を、通った。
 
 ここで一言。
 
 ・・・宮古遠い
 
「かえりたーい かえりたーい あったかい わがやが まっているぅ」
 
 距離的には130キロで、道路についているだいだい色の数字らしき染みを無視すれば、一時間ちょっとでつける。普通なら。
 
 しかしここはみちのくのおく。かつて剽悍(ひょうかん)な蛮族が住んでいた地理的孤島。
 
 ここからはずっと、ぐにゃぐにゃにゆでられたきしめんのような道が続く。
 しかも渋滞が(こんな田舎でなぜ?)が発生していて、たかだか20キロ先の隣町に進むのに一時間かかる。 
 
 
 
 ほら、これが有名な「奇跡の一本松」ね。津波→松原全滅→一本だけ残った! ってやつ。今は「サイボーグ化」されて、塩害にも強くなった。出雲大社に分枝分けした株があって、ひょろひょろ育っているぞ。

 俺は殖産興業と富国強兵に思いを巡らせるイケてるメンズなので、この陸前高田市にボランティアに来たことがある。5年前のことだ。
 
 そのころから、景色がほぼ変わってないんだよな・・・
 
 だだっ広い原野になっていて、そこのあちこちにポツポツと建っているアパートやら病院やらで、どうも街だったらしい推測できる。変わったところと言えば、立派な堤防ができた(完成したとは言っていない)ぐらいだ。
 
 さて、この時期は夕方5時を過ぎると、もう暗くなる。夜間走行のお時間だ。米米CLUBの「浪漫飛行」を脳内再生しながら前進だ!
 
 ちなみにこの歌は、俺がホームヘルパー2級(当時はこうゆう呼び名だった)の資格取得のため老人ホームに行って、そこで一曲歌うことを強要されたとき、10トン爆弾みたいにでかいカラオケマシーンに入っていた唯一歌える歌だった。
 
 あ、あと思い出したけど、小説に『夜間飛行』っていうのがある。宮崎駿が表紙絵と描いているおかげで、読書家じゃないヤツにも有名な作品だ。内容は、昔、レーダーはおろか満足な無線機もなかった時代に、夜間飛行をして郵便を届けるパイロットの話だ。作者の自伝的な要素が濃いな。作者の名前は、サン・テグ・ジュペリだ。
 
 なお、この人の作品でおすすめなのが『戦う操縦士』。本屋で見かけたら、ぜひ手に取ってみてほしい。絶版だけどな、わはは!
 
「仮面ライダークロニクル!ってごめんなんでもない。
 
 こんな、とりとめもないことをつらつらと考えているのは、ようは、全身が、しんどいのだ。
 
「アクセルとブレーキばっかり踏む作業飽きた・・・」
  
 なんかさあ、一兆分の一の確率とかでいいから、アクセルとブレーキが不意に入れ替わる機能があったら、おもしろいと思わねえ?
 
 運転に張り合いがでるし、集中力が増すし、怖くて急発進急ブレーキができず車間距離もあけるようになるから、かえって事故が減ると思うんだよ。え、それで事故が起こったら? 「運がなかったと思ってあきらめるんだな」。

 よし、ここで元気の出る歌を歌おう!
 
 
「しゃせ~ おなにぃをするために♪ えろ動画がぁ ひつよう ですよ♪」
 
 
 
・・・はあ。 宮古遠いなぁ。
 
  あたりはすっかり暗い。大船渡を通過し、釜石に到達する。街灯がほとんどないため、あそこにあるのがアパートなのかマンションなのかいまいち判別がつかない。もう6時を回っている。宮古まであと55キロ。
 
 俺には目標があった。
 
 夜の7時半までに、宮古につくのだ。そして家の近くの銭湯に行くのだ。その銭湯は8時で閉まる。
 
 ああ、この往復1000キロの運転の疲れを癒すには、絶対に銭湯の力が必要だ。あの、ロッカーの半分は鍵が壊れていて、湯気でしわしわになった『テルマエ・ロマエ』のポスターがある、お風呂。そこのささやかな湯船で、人目をはばからずストレッチするのだ。
 
 とゆうか、マジで右足がつりそう。足に激痛が来る三秒前だったので、思わず左足でブレーキを踏んだ。踏みにくいなぁ、おい。
 
 そこで、ついに待望の看板を見つけた。


←三陸自動車道


 やった! 勝った! 第三部完! あれは限定的に開通している、宮古市への道じゃないか! 
 
 なぜ、勝ちを確信したのか? それは、まだ6時半であり、この調子なら十分銭湯に間に合うからだ。カーナビも俺の意見に肯定している。約束された勝利のカーナビ。
 
 どうやら俺の、車に対する速度的バイオベラティが、地球のコリオリ力を精神的に上回ったようだな! ざまあみろ! 資本主義の豚め!(意味不明)。
 
 ぐるりとU字カーブがあるむずかしい道だが、なに、問題はない。ガソリンも乏しいが、重荷が減って好都合だ。いざとなったら灯油を飲ませれば、少しぐらいは走るだろう。
 
 
 相変わらず暗い道を進む。いくつかトンネルをくぐりぬけた。そして道の奥にはほのかな明かりが。やった! 出口だ!
 
 道を降りたとき、信じられないものが目に飛び込んできたんだ。
 
「大船渡」
 
 え・・・ ここって、とっくの昔に通過した地名じゃないですか。そういえば職場まで車で送り迎えしてくれた同僚がとばされたのが大船渡なんだけど、俺も飛ばされたか?
 
 やがて、見覚えのある道にでる。数十分前に通った道だ。
 
 そして、もう一度、「←三陸自動車道」の看板を見つけた。小さな但し書きがあった。

  
「宮古・久慈方面には通り抜けできません」
 


目的地まで(まだ)55キロ
 
※ ※ ※

 一度進んだ道程を、再び歩むなんぞ屈辱でしかない。男に後退の二文字はなく、俺の踏み記したロードが未来になるのだ。 
  
 しかし、ぐだり始めたのは認めなければなるまい。その理由は明らかに、「暗くて看板がよく見えなかった」につきる。 
  
 道路看板の関係者はもっと大きな案内表示を、設置する必要があるだろう。山の斜面を切り開き、ハリウッドの看板のように M  I  Y  A  K  O とでっかいアルファベットをおっ立てる程度の工夫は必要だろう。 
  
 いや、「MIYAKO」では、この地方に来たばかりの観光客には、自分が北に進もうとしているのか南に進もうとしているのかわからない。ここはもっと有名な都市名を使おう。さよう、
 
 H A C H I N O H E 

とかだ。なんかよくね、なだらかな山にそそり立つ「HACHINOHE」の文字。きっとそれなりにインスタ栄えするぜ! 
 
 なお、今通っている国道45をずっと北に進むと、八戸市に着ける。
  
  
 道は続く。カーナビは「7時41分着予定」と表示している。カーナビの常だが、これはかなりゆっくりして行ったときの時間だから、普通はもう少し早くつける。しかし、微妙なところだ。 
  
 大槌町を通過する。ここは沖に「ひょっこりひょうたん島」のモデルになったと言われているでっかい岩がある。とはいえ、今のてぃーんえいじゃーに「ひょっこりひょうたん島」と言っても、わからないか。俺も名前しか聞いたことがないし。 
  
 ところで、なぜ俺が「三陸自動車道」の看板にほいほい釣られてしまったのには、ちゃんと理由がある。あるのだ、俺の行きたい、「三陸自動車道」が。 
  
 画像がないのが残念だけど、口で説明すると「山田町」というところに、宮古方面に向かう自動車道が開通してあるのだ。さっきはこことまちがえたのだ。 
  

 ちなみにこの道路の案内表示には「宮古」方面と書いており、さも宮古に着けるような印象を与えるが、実際はそんなことはない。ここは、山田町の南はじから北のはじまで行けるに過ぎない道路なのだ。ぶっちゃけそんなにありがたみがない
 
 
 まあ、あるからには利用するけどな!
 
 
 この道は本当に暗い。闇に対する人間の原初的恐怖とか、そんなのがかきたてられそうだ。思わずアクセルを踏む力が入る。
 
 人間は、文明を発達させることによって、実質的に四足歩行に戻りつつあるのだと思う。なぜなら自転車も自動車も船も飛行機も、両手でハンドルやらを操作しなければならず、そして人間の腕は本質的には前足だからだ。
 
 いてて、また足が吊りそうになった。トンネルを通過する。
 
 このトンネルは、この記事前編にアップした写真の、トンネルだ。
 
 
 道路を降りる。
 
 
 
 海岸沿いなものの、出来立て真っ白な堤防がずっと続く道に出たら、もうそこは目的地である宮古市だ。
 
 カーナビによれば、市街地にある借家近くの駐車場には、7時30分に着くと出ている。きわどいところだ。
 
 なお、山田町から宮古市中心部の区間の国道45号を飛ばすことはおすすめしない。道路沿いの少し奥まったところ、合戦なら伏兵を置くような位置に宮古警察署があり、ヒマなおまわりさんをハッスルさせてしまう可能性が高いからだ。
 
 ああ、明るい街並みが見える。本当は小都市にすぎないから、さほど明るくはないんだけど、それでも暖かな光が見える。おお、あそこにあるのは宮古市のランドマーク、市役所より立派なパチンコ屋じゃないか。
 
 そして・・・ ついに・・・
 
 
 
 着いた・・・ 
 
 感慨はない。いや、あるんだけど、疲れが上回って、それどころじゃない。ちなみに走行距離はこんな感じだ。
 
 
酷使前

酷使後


おおよそ1,253キロ。もはや言葉がない。
 
 あのヒーターがだいたい諸費用込みで1万2千円だから、1キロあたり10円の配送料なわけだ。なんだ、安いじゃん!(錯乱)
 

 よし、風呂、メシ、寝るだ。


 今は7時40分。俺のチャリンコのスピードを持ってすれば、今日の売り上げの計算をしている番頭のおばちゃんにもう一度金勘定をさせることは、たやすいことだ! 行くぞ! まなみ五号!
 
 

 うわぁー 月曜は定休日だったぁ


 なんで、どうして? 定休日を設けることにまったく文句はないけど、今日体育の日じゃん? つまり休日だろ? 仮にも観光地にある風呂屋が、祝日に休んでいいのか!?
 
 この分だと、市街地にある銭湯は全滅だろう。離れたところにある日帰り入浴施設には、今の俺の体力では無理だ。
 
 
 いいもん。ご飯食べるもん。
 
 
大阪王将の光は、関西出身者にはなつかしく感じられる




 ここでちょっと、この記事を読み通してくれた人のお手を拝借したい。
 
 アルコールを、持ってきてくれたら幸いだ。
 
 今昼間、もしくは未成年は、ソフトドリンクでもかまわない。
 
 このヘンテコな旅行の終わりを、いっしょに祝して欲しい。
 
 

 それではみなさん、コップ、ジョッキ、ビン、その他液体の入った器をお持ちください。
 
 旅の無事を祝して――
 
 
 
 


 乾杯!


 
 



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